フランスの労働組合STJVは4月29日、Naconを非難する声明を発表した。フランスの大手パブリッシャーNaconは今年2月25日に資金難を理由に「司法再建手続き」を要請したと公表、それに伴って傘下のデベロッパーSpidersがスタジオの閉鎖を発表していた(関連記事1/2)。この度のSTJVの声明はそうしたNaconの経営戦略を批判するものであり、声明文のなかでは「Naconに金銭を与えないように(avoid giving their money to Nacon)」とプレイヤーに要請する一文もあり、注目を集めている。

STJV(Syndicat des Travailleurs et Travailleuses du Jeu Vidéo)はフランスで2017年に設立されたビデオゲーム産業の従業者業界向けの労働組合だ。フランスにはすでにSNJV(Syndicat national du jeu vidéo)というビデオゲーム業界向けの労働組合があるものの、既存の労働組合は多種多様な職種が存在するゲーム産業の労働者を十分に代表できていないとして、STJVが独立系の労働組合として結成された。STJVは同業界に関わるすべての労働者のために連帯する姿勢を示している。

Spidersは2008年に設立されたフランス・パリに拠点を置くゲーム開発会社だ。代表作にRPG『GreedFall』シリーズや『Steelrising』などがあり、2026年には『GreedFall』シリーズの最新作『GreedFall: The Dying World』をリリースした。2019年にフランスのパブリッシャーNaconに買収され同社の子会社となっていたが、2026年2月に始まったNaconの再建手続きの影響を受けて、4月29日(現地時間)にスタジオを閉鎖することを発表した(関連記事)。

NaconとSpiders間の一連の出来事を受けて、STJVはすぐさま声明を発表した。「Spidersへの清算命令‐社会崩壊の物語 (Spiders’ liquidation – a tale of social destruction)」と題された声明文で、同組合はこの度のNaconの動向を「第一級殺人(アメリカの刑法における、最も罪の重い殺人の等級)」に例えて強く非難した。

同声明によればSpidersは『GreedFall』(2019年)以降、手がけたゲームから一切のロイヤリティを受け取っておらず、収益は事実上Naconに没収されていたと指摘。くわえて、同スタジオで開発中だった「Dark」と呼ばれるプロジェクトが2025年に突如中止になったことで、Spidersは存続の危機に陥ったという。

というのも、Spidersは『GreedFall: The Dying World』のリリース以降、「Dark」以外の開発計画を持っていなかったようだ。スタジオ存続のためには別途Naconとの契約が必要だったが、Nacon側からの契約締結は何度も延期されたという。そのうえNaconは、Spidersがほかのパブリッシャーや投資家にサービスを提供することを禁じていたと同組合は指摘し、これにより同スタジオが経営危機を解消する方法は封じられていたとSTJVは批判する。

また、Naconは司法再建手続きに入った後もSpidersと契約を結ぶことは可能だったにも関わらず、同社を救済する意思を一切見せなかったとSTJVは主張。さらにSpidersおよびNaconの経営陣に対しては、会社の経済状況や経営戦略について従業員代表が何度も警告を発してきたのにも関わらず、それを無視して杜撰な経営が続けられてきたと指摘。こうした経緯から、今回のSpidersの事業清算はNacon経営陣によって計画的かつ意図的に引き起こされたものだと、STJVは主張している。「計画的かつ意図的で、正当な理由がない殺人行為」というアメリカ刑法の「第一級殺人」に例え、Spiders閉鎖について非難している。

くわえてSTJVは声明のなかで、Spidersに上述の仕打ちをしたNaconが引き続きビデオゲームを食い物にすることは断固として拒否するとし、Naconに金銭を支払わないようにと異例のボイコットを呼びかけている。自分たちが関わったゲームが楽しまれることを願ってはいるものの、Naconに資金を提供することは同社が行った行為を助長することになるとSTJVは説明している。

『GreedFall』

Nacon再建に伴う一連の手続きをめぐり、フランスの労働組合が同社の経営陣を強く批判するかたちとなった今回の騒動。特にゲームの不買運動とも取れる声明には業界内外で波紋を広げており、Naconの今後の対応や再建手続きの行方について注目が集まるところだ。

Share.

Comments are closed.