携帯型ゲームPCの市場は、Steam DeckやROG Allyシリーズの登場以降、PCゲームを「机の前」から持ち出すジャンルとして定着しつつある。そこにIntelが新たに投入するのが、携帯型ゲーミングPC向けCPU「Intel Arc Gシリーズ」だ。

今回はその上位モデルとなる「Intel Arc G3 Extreme」を搭載するMSIの「Claw 8 EX AI+」を試用する機会を得た。まずはArc Gシリーズの特徴について解説し、後半では実ゲーム10本を用意し、MSI Claw 8 EX AI+のゲーム性能をテストする。

Intel Arc Gシリーズとは何か

Arc Gシリーズは、Intelが携帯型ゲーミングPC向けに用意した新しいCPUだ。ノートPC向けのCore Ultraシリーズ 3と同世代の技術をベースにしつつ、製品名にはCPUブランドの「Core」ではなく、グラフィックスブランドの「Arc」を前面に出した。

携帯型ゲーミングPCでは、ノートPC以上にGPU性能、電力効率、ドライバー最適化、アップスケーリング技術の完成度が体験を左右する。携帯型ゲーミングPCという用途に合わせて構成や電力制御を詰めたCPUである点が大きな特徴だ。

ラインナップは上位のArc G3 ExtremeとArc G3の2種類。今回のMSI Claw 8 EX AI+が搭載するArc G3 Extremeは、CPUは14コア構成で、GPUとしてXe3アーキテクチャベースの12基のXeコアを備える。CPUは2基のPコア、8基のEコア、4基のLP Eコアで、携帯型ゲーミングPCに必要な処理性能と電力効率のバランスを狙った設計だ。

ハンドヘルド向け最適化の中身

Arc Gシリーズで注目したいのは、単にGPUコア数を増やしただけではない点だ。Intelは、携帯型ゲーミングPCに不要、または優先度の低いリソースを整理し、ゲーム時に重要なGPU側へ電力を回しやすい設計にしている。

例えばノートPC向けの最上位構成と比べると、Arc G3 ExtremeはPコア数を抑え、EコアとLP Eコアを組み合わせた14コア構成となっている。ゲームでは起動時や一部の重い場面で高性能コアが必要になる一方、プレイ中はGPUが主役で、CPU側はゲームロジックやバックグラウンド処理を安定してさばく役割が大きい。そこでPコアを大量に並べるよりも、限られた電力枠のなかでGPUに余力を残す方向に振っている。

さらに、ハンドヘルド向けの最適化として「Intelligent Bias Control(IBC)」の進化も挙げられる。従来のPCでは、OSやThread Directorがワークロードに応じてPコア/Eコアへ処理を振り分け、CPUとGPUの電力配分も細かく変動する。しかし携帯型ゲーム機として使っている場面では、WordやPowerPointを同時に動かすよりも、目の前のゲームを一定のフレームレートで安定して動かすことが優先される。

Arc G3シリーズ向けのIBCでは、低電力時にPコアをオフにするPコアパーキングや、Eコアを優先的に使うスケジューリング、CPU/GPU間の電力配分をゲーム向けに安定させる制御が導入されている。狙いは、瞬間的なピーク性能よりも、長時間のゲームプレイでフレームレートの落ち込みや揺れを抑えることを重視しているのが特徴だ。

XeSS 3とEndurance Gamingで「高fps」と「長時間」を両立

現在のPCゲーミングにおいては、フレームレートを向上させる手段としてAIによるアップスケーラーやフレーム生成の利用が当たり前になりつつあるが、Arc GシリーズでもIntel独自の「XeSS 3」として積極的に取り入れている。

XeSS 3は、アップスケーラーのXeSS Super Resolutionに加え、フレーム生成のXeSS Multi Frame Generation、低遅延化技術のXeLLを組み合わせる。XeSS対応ゲームでは、Intel Graphics Softwareアプリからマルチフレーム生成を設定が可能だ。一方で、フレーム生成は「GPUが実際にレンダリングしたフレーム」と「AIで生成されたフレーム」を分けて考える必要がある。入力遅延やゲームジャンルとの相性もあるため、競技性の高いFPSや格闘ゲームでは慎重に扱いたい。

もう一つの注目機能がEndurance Gamingだ。これは30/40/60fpsなどの目標フレームレートを設定し、その目標を維持するために必要な範囲へ電力を絞り込む機能。常に最大性能を狙うのではなく、「このゲームは30fpsでよい」と割り切ることで、バッテリー駆動時間を延ばす。アドベンチャーやローグライクなどの高フレームレート動作が重要ではなく、長時間じっくりプレイするタイプのゲームに合っている。

初回起動時の体験を改善するPrecompiled Shaders

Arc Gシリーズでは、プリコンパイル済みシェーダーの配信にも対応する。対応するSteamタイトルでは、Intelのクラウドから事前最適化されたシェーダーファイルを取得することで、初回起動時の待ち時間や、ゲーム序盤で発生しがちなカクつきを抑える狙いだ。携帯型ゲーミングPCは、据え置きPC以上に「空いた時間にすぐ遊べる」ことが重要になるだけに、対応ゲームが充実することを期待したい。

Arc G3 Extreme搭載の「MSI Claw 8 EX AI+」

ここからは、Arc G3 Extreme搭載「MSI Claw 8 EX AI+」を使って実際の実力をチェックしていこう。MSI Claw 8 EX AI+は、Arc Gシリーズが発表されたCOMPUTEX TAIPEI 2026の会場や関連イベントでも数多く展示されていた注目モデルだ。

ディスプレイは8型のWUXGA(1,920×1,200ドット)で、本体のサイズは幅296~321mm×奥行き130mm×高さ25~48mm、重量は785gだ。メモリがLPDDR5x-8533 32GB、ストレージが1TB SSD(PCI Express 4.0 x4接続)、ワイヤレスがWi-Fi 7、Bluetooth 6.0対応となっている。

高い基本性能、人気ゲームも中画質なら快適にプレイ可能

まずは、PCの基本性能を測定する「PCMark 10」、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「CINEBENCH 2026」、ストレージのデータ転送速度を測る「CrystalDiskMark」を試そう。なお、テスト時の動作モードはすべて「AIエンジン」に設定している。

PCMark 10の結果

PCMark 10の結果

CINEBENCH 2026の結果

CINEBENCH 2026の結果

PCMark 10はどのスコアも優秀だ。GPU性能が高いこともあって、クリエイティブワークのDigital Content Creationのスコアも高く、外部モニターと組み合わせて普段使いのPCとしても十分快適に使うことができる。CINEBENCH 2026のスコアを見ても、14コアあるだけに高めの結果だ。快適にゲームをプレイするためには、CPU性能も重要なので当たり前とも言えるが、十分なほど高い基本性能を備えていると言ってよい。

ストレージはシーケンシャルリードが6,987.58MB/s、シーケンシャルライトが5,849.21MB/sと携帯型ゲームPCとしてかなり高速だ。ゲームのロードなどストレージ関連で不満を感じることはないだろう。

続いてもっとも気になる実ゲームを試そう。まずは、XeSSのフレーム生成に対応しないタイトルとして「Apex Legends」、「オーバーウォッチ」、「ストリートファイター6」、「ELDEN RING」、「ELDEN RING NIGHTREIGN」、「Forza Horizon 6」を試そう。解像度は基本1,920×1,200ドット、それぞれ中画質設定としている(ストリートファイター6のみ画面比率16:10が設定できないので1,920×1,080ドット)。条件は以下の通りだ。


Apex Legends:中画質で射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
オーバーウォッチ:画質“NORMAL”でbotマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
ストリートファイター6:画質“NORMAL”でCPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
ELDEN RING:画質“中”でリムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
ELDEN RING NIGHTREIGN:画質“中”で円卓の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
Forza Horizon 6:画質“ミディアム”、XeSS“バランス”でゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定

フレーム生成がなくても中画質設定なら多くのゲームが快適に楽しめると言える結果だ。Apex Legends、オーバーウォッチと人気FPSを十分プレイできる。ストリートファイター6、ELDEN RING、ELDEN RING NIGHTREIGNは最大60fpsのゲーム。ELDEN RINGだけはもう少し画質を下げる必要はあるが、ほかの2本は平均フレームレートはほぼ上限に届いている。Forza Horizon 6はXeSSのアップスケーラーに対応するが、フレーム生成には対応しないというタイトル。美麗なグラフィックのゲームだが、平均64fpsとなった。

続いて、XeSSのアップスケーラーとフレーム生成の両方に対応するタイトルを試す。「マーベルライバルズ」、「アサシンクリード シャドウズ」、「ホグワーツ・レガシー」、「サイバーパンク2077」を用意した。フレーム生成に対応ということは、Intel Graphics Softwareアプリで1フレームから最大3フレームを生成する「4倍フレーム生成」に設定できる。そのため、これらタイトルは通常の2倍フレーム生成(FG2x)と4倍フレーム生成(FG4x)の2パターンで測定した。


マーベルライバルズ:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
アサシンクリード シャドウズ:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
ホグワーツ・レガシー:画質“中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、寮内の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
サイバーパンク2077: 画質“レイトレーシング: 中”、XeSS“バランス”、フレーム生成有効で、ゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定

通常の2倍フレーム生成だけでも効果は絶大だ。今回のタイトルであれば、中画質設定でどれも快適にプレイできる目安と言える平均60fpsをクリアしている。重量級ゲームも遊べる環境が整っていると言ってよいだろう。4倍フレーム生成を有効にすれば、いずれも明確にフレームレートが向上している。アサシンクリード シャドウズ、ホグワーツ・レガシー、サイバーパンク2077のようなオープンワールド系のゲームは滑らかな描画のほうがその世界への没入感をアップさせてくれる。それをユーザーが“選べる”ようになっているのが重要だ。

バッテリー駆動時間や動作音、温度もチェック

携帯型PCゲーム機となれば、バッテリー駆動時間も気になるところだ。資料によれば、Forza Horizon 6で2時間47分、GTA Vで2時間31分といったデータがある。ここではPCMark 10のBatteryテストから、ゲームを実行する「Gaming」を試した。

結果は2時間32分になった。これは高負荷が続くテストなのでかなりワーストケース寄りと見てよいだろう。実際にこの動作時間でも携帯型ゲームPCとして優秀なほうだ。Endurance Gamingを使えば、大幅に伸びるだろう。

続いて、サイバーパンク2077を10分間実行したときのCPUとGPUの温度を、システム監視アプリの「HWiNFO Pro」で測定した。室温は24℃だ。CPUは平均67.4℃、GPUは平均66.6℃としっかり冷却されており、長時間のプレイでも問題ないだろう。また、動作音も前面と上部のそれぞれ10cmの位置に騒音計を設置して測定したが、前面が36.1dB、ファンの排気口がある上部で40.7dBだった。ファンの音は聞こえるものの、それほど気にならないレベルだ。冷却システムの完成度は高い。

携帯型ゲームPCのゲーム体験を向上させてくれる存在

Arc Gシリーズは、Intelが携帯型ゲーミングPC向けに初めて明確な専用ブランドとして打ち出したCPUだ。これまで内蔵GPUで積み上げてきたXeアーキテクチャの進化を、ハンドヘルドPCという成長市場に持ち込んだ格好と言える。

MSI Claw 8 EX AI+は性能、動作音、使いやすさのいずれの面からも高い完成度を見せた。携帯型ゲームPCのゲーム体験をワンランク上のものにしてくれる存在と言ってよいだろう。ただ、価格は1,500ドル前後(日本円で約24万円前後)と予想されている。メモリ、ストレージが高騰している状況を考えると仕方のない面もあるが、どこまで注目を集めることができるか。日本での発売を待ちたい。

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