――愛すべき“混沌”が、今ふたたび転がりはじめる!

バンダイナムコが誇る奇才シリーズ『塊魂(Katamari Damacy)』が、ついに新章『ワンス・アポン・ア・カタマリ(Once Upon a Katamari)』として帰ってきた。
本作は、2000年代に登場した初代『塊魂』の独特な世界観と“転がすだけ”という異様なシンプルさを継承しつつ、現代のプレイヤーが求める遊びやすさ、ストーリー性、ビジュアルのアップデートを見事に融合させた意欲作だ。

ここでは、そんな本作の魅力を「物語」「ゲーム性」「新要素」「ステージ構成」「音楽」「総評」の6つの観点から、シリーズファン・初プレイヤーの両方の目線で徹底的にレビューしていこう。

■ “クールなおじさんゲーム”の帰還

『塊魂』シリーズを一言で表すなら、「奇抜なのに心地いいカオス」だろう。
一般的な人気作のように大ヒットこそしないが、強烈な個性とユーモアで熱狂的なファンを獲得してきた――いわば“クールなおじさんゲーム”の代名詞的存在だ。

現実ではありえない「何でも巻き込める球体を転がして世界を大きくしていく」というバカバカしい発想に、なぜか癒される。
『ワンス・アポン・ア・カタマリ』は、そんな“カオスの魔法”を再び見事に蘇らせている。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ ストーリー:またしても王様のドジから宇宙崩壊

『ワンス・アポン・ア・カタマリ』の物語は、シリーズおなじみの“王様のやらかし”から始まる。

宇宙の大掃除をしていた王様が、掃除の途中で謎の巻物を見つける。だが、好奇心旺盛な王様はすぐに掃除を放棄し、巻物で遊び始め、最終的にそれを宇宙へ放り投げてしまう――結果、宇宙はまたもや崩壊。
この大惨事の後始末を任されたのが、我らが主人公「王子」だ。

プレイヤーは王子として、宇宙船「S.S.プリンス」に乗り込み、時空を超えて“人類の本質”をカタマリとして集める使命を負う。
訪れるのは、氷河期、古代ギリシャ、江戸時代など、9つの時代にまたがる50以上のステージ。
人類の歴史を文字通り転がして再構築していく、スケールの大きな物語が展開される。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ ハブエリア「S.S.プリンス」 ― カタマリ宇宙の新しい拠点

新要素のひとつが、王子の宇宙船「S.S.プリンス」だ。
ここでは、各時代への出発準備を整えたり、ステージ選択を行えるだけでなく、キャラクターのカスタマイズや部屋のデコレーションなども可能。

特に嬉しいのは、シリーズの象徴的キャラである「いとこ」たちを自分で作成・命名できる点だ。これにより、プレイヤー自身の個性がより深くゲームに反映されるようになっている。
拠点要素としてはシンプルだが、シリーズに“帰る場所”ができたこと自体が大きな進化といえる。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ ゲームプレイ:転がす快感は健在、さらに遊びやすく

基本システムは従来どおり、転がして巻き込む”という究極にシンプルなもの。
プレイヤーは王子を操作して「カタマリ」と呼ばれる球体を転がし、街のゴミや人、建物などをどんどん巻き込んで大きくしていく。
小さなクリップから始まり、最終的には街全体を丸ごと巻き込むスケール感――この成長の気持ちよさが『塊魂』最大の魅力だ。

操作は「スタンダード」と「シンプル」の2種類。
スタンダードでは両スティックを駆使して本格的な転がし操作を行い、シンプルでは片方のスティックだけで転がせるため初心者でも安心。
相変わらず慣れるまでカオスだが、上手く転がせるようになった瞬間の快感は格別だ。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ 新要素“フリービー”アイテムでカタマリが進化

本作最大の新要素が、“フリービー(Freebies)”と呼ばれるアイテム。
ステージ中に落ちているアイテムを拾うことで使用可能で、内容は以下の4種類。

🧲 マグネット:周囲の小物を自動で引き寄せる

⏱️ ストップウォッチ:一定時間、時間を停止させる

📡 ソナー:重要アイテムの位置を感知する

🚀 ロケット:一時的に速度を大幅アップ

どれも便利ではあるが、あくまで“ちょっとしたサポート”にとどまり、ゲーム性を根底から変えるほどではない。
「もっととんでもないアイテムがあっても面白かったのでは?」と感じる部分もあるが、それでもテンポを崩さずにプレイ体験を豊かにしてくれる。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ ステージデザインの秀逸さ ― “バカバカしさ”と“歴史”の融合

『ワンス・アポン・ア・カタマリ』の最大の魅力は、なんといってもステージ構成の多彩さとユーモアだ。

古代ギリシャのステージ「哲学者狩り」では、マップ上に散らばった哲学者たちを転がして捕獲するたびに、その人物の名言が画面を覆うというカオスな演出が登場。
一方、日本の「妖怪大行列」では、夜の闇の中で青白い灯りを転がしながら妖怪を集める幻想的なステージが楽しめる。

このように、時代背景をコミカルに解釈しつつも、デザイン面では緻密に作り込まれているのが本作の真骨頂。
見た目の面白さだけでなく、BGMも各時代に合わせたJ-POP風や民族音楽などが用意され、プレイヤーのテンションを自然に高めてくれる。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ 新モード「カタマリボール」 ― 4人対戦で転がし合い!

シリーズ初のオンライン要素として導入されたのが、新モード「カタマリボール」。
4人のプレイヤーが同時にステージ上を転がし、集めたアイテムを宇宙船に持ち帰ってスコアを競うというルールだ。

テスト段階ではAI戦だったが、正式版ではオンライン対戦に対応予定。
これまで“ひとりで黙々と転がす”が基本だったシリーズに、ついに対戦という新たな刺激が加わることになる。

■ 課題:一部ステージの単調さと革新性の不足

全体として完成度は高いものの、やや物足りなさを感じる部分もある。
一部のステージは従来作の「○分以内に○サイズまで大きくしろ」といった単調な構成で、せっかく創意あふれるコースを体験した後では少々退屈に感じることもある。

『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』や『アストロボット』のように、毎ステージに驚きやアイデアの爆発がある作品と比べると、革新性の点で一歩及ばない印象だ。
とはいえ、“塊魂らしさ”を守りながらここまでモダンに仕上げたこと自体、称賛に値する。

ワンス・アポン・ア・カタマリ■ ビジュアルと音楽 ― ノスタルジーと新しさの共演

グラフィックは一新されており、彩度の高いトゥーン調のビジュアルに滑らかなアニメーションが加わっている。
オブジェクトの質感も現代的にアップデートされ、昔ながらのチープさを保ちながらも、現代機にふさわしい完成度を実現。

音楽面も健在だ。軽快なJ-POP風テーマや、民族調リズム、シンセポップなど、多彩なサウンドがシーンを彩る。
特に、王様登場シーンの効果音やボイスエフェクトは往年のファンにはたまらない“懐かしさ爆弾”だ。

■ 総評 ― “転がす快感”の再定義

『ワンス・アポン・ア・カタマリ』は、単なるリブートではない。
シリーズが長年築いてきたユーモア、音楽、デザイン、そして「転がすことの楽しさ」を再構築し、現代的に昇華させた傑作だ。

確かに、もう一歩踏み込んだ革新や“ぶっ飛び”があれば、伝説級のタイトルになっていたかもしれない。
だが、それを差し引いても本作は、「塊魂」というブランドの原点回帰でありながら進化でもある。

🌟 総合評価:★★★★★ 4.5 / 5

良かった点

シリーズの魅力を完全再現しつつ、現代的な遊びやすさを実現

時代ごとのステージ構成と音楽が秀逸

新要素(S.S.プリンス、カタマリボール、フリービー)で遊びの幅が拡大

気になった点

『ワンス・アポン・ア・カタマリ』は、まさに“混沌の芸術”を再定義した一作だ。
転がすたびに、笑い、癒され、そして少しだけ考えさせられる――
そんな唯一無二の“転がし体験”が、今、再び始まる。

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