2026年1月20日、スイス・ダボスで開催された第56回世界経済フォーラム(WEF)年次総会におけるAvride配送ロボット。Reuters
AIチャットボットやエージェントが主なプレーヤーとなる世界では、物理的なAIについて議論が不足している。
Business Insiderのジェイミー・ヘラー(Jamie Heller)が司会を務めた2026年1月22日の朝に行われたダボス会議でのパネルディスカッションでは、ロボット工学の専門家たちが、ボットがどう世界を変えるのか、そしてボットの主な限界について掘り下げた議論を行った。
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ロボット工学と自動化の専門家、そしてアラブ首長国連邦の貿易大臣を招いた世界経済フォーラムのパネルディスカッションから得られた3つの要点は次の通りだ。
1. デジタルツインは過剰な期待から実際の利益へ
議論の中心となった1つの言葉は、デジタルツイン(編注:Digital Twinとは、現実世界のデータを基に、サイバー空間へ双子のように精密なコピーを再現する技術)だ。
シーメンス(Siemens)、アジリティ・ロボティクス(Agility Robotics)、オートメーション・エニウェア(Automation Anywhere)の幹部らは、かつては遠い未来の話に思えた技術が、今や企業に真の生産性の向上をもたらしているとそろって認めた。
デジタルツインは、物理的な物体、人物、プロセスのデジタル複製のことである。デジタル複製は、組織が現実の状況をシミュレートし、その結果を予測することで、より良い意思決定を可能にする。
オートメーション・エニウェアのミヒル・シュクラ(Mihir Shukla)CEOは「デジタルツイン自体は以前から存在していたが、技術と計算能力が飛躍的に向上しました」と述べる。
「例えば製造工程で問題が発生するとデジタルツインが警告すれば、事前に手を打つことができます。それは、在庫管理や出荷計画にも影響します」(シュクラ)
シーメンスのローランド・ブッシュ(Roland Busch)CEOは、デジタルツインによる生産性向上が数値に表れてきているという。
ブッシュによると、シーメンスの生産量は20%増加し、エネルギーコストは20%削減されたという。
「デジタルツインを活用すれば、立ち上げがはるかに迅速化し、ミスも発生しません」(ブッシュ)
2. 人手不足がヒューマノイドロボットを推進
アジリティ・ロボティクスのCEOペギー・ジョンソン(Peggy Johnson)は、ロボットは人間ができない、あるいはやりたがらない作業をこなすことができると指摘する。
「こうした肉体労働職の採用は非常に困難です。単調で汚れる仕事で、繰り返し持ち上げる作業が延々と続くため、時には危険をともないます。精神的に疲弊する仕事なのです」(ジョンソン)
ロボット技術の急速な進歩は、こうした仕事に従事する人間の生活の質の向上につながる。
彼女は重い物を頻繁に持ち上げる作業についても言及し、「負傷するリスクもある」と語った。
「労働力の高齢化が進んでいます。若者はこうした環境での仕事を避けがちです。そのため高齢の従業員が負傷する率も上がっています」(ジョンソン)
アラブ首長国連邦(UAE)の外務貿易大臣、タニ・アフメド・アル・ゼユディ(Thani Ahmed Al Zeyoudi)も、「非熟練」労働の未来を支えるのはロボット技術だという。
「建設現場に若者を惹きつけるのは難しすぎます。ロボット技術が主な解決策なのです」(アル・ゼユディ)
しかしジョンソンは、人間のいる環境で安全に使えるロボットを作ることも重要だと指摘した。

