「スマホを見ない」と決めるだけでは不十分です。脳を味方につけるための「習慣化」や「内発的動機づけ」、そして強制的にネットから離れる環境づくり。

今回は高橋暁子さんの著書『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)を一部抜粋してご紹介いたします。

小さなゴールを可視化することで、意志の力を頼らずに勉強や目標に集中できる仕組みの作り方を伝授します。誘惑の多い時代を生き抜くための、具体的な自己管理ガイド。


依存になりやすいのはどんな時期?

ネットの利用時間が長くなることで、なし崩し的に依存状態となってしまった人は過去にもたくさんいます。

たとえばコロナ禍では、授業がオンラインになり、学校に行けなくなったことでネットやゲームの依存状態となってしまった人は数多くいました。行く場所がなくなり、やれることもなくなり、友達に会えなくなり、代わりにネットやゲームの利用時間が増えたためです。やることがなくストレスを抱えた状態の時期は、依存しやすいのです。

あるゲーム依存症になった20代男性のエピソードをご紹介します。彼の場合、コロナ禍で大学の授業がオンラインになったことをきっかけに、ゲーム依存に陥りました。ひとり暮らしをしていた彼は外出する機会が減り、次第に自宅にこもるようになってしまいます。



そして、スマホのゲームに一日10時間以上も没頭する生活が続くようになりました。

その結果、昼夜逆転の生活となり、授業やサークル活動にも参加できなくなっていきました。家族や友人からの連絡にも応じなくなり、数ヶ月間、引きこもってゲームだけを続けるような状態が続きました。そして最終的には、大学を退学せざるを得なくなってしまいました。

退学後、彼はすぐに実家へ戻り、家族のすすめでネット依存専門の外来に通い始めました。治療と同時に、家族や友人の温かい支えもあり、少しずつゲーム依存から抜け出していくことができました。現在では、新たに別の大学に入学し、新しい夢に向かって勉学に励む毎日を送っています。

この男性も、受験勉強を経て大学に受かり、進学した先でゲーム依存になったことで退学する羽目になってしまいました。大学に受かったからといって、決して何も終わりではありません。むしろそれからの方が、人生の本番と言えるのです。

このようにストレスやプレッシャーで追い詰められたり、行き場がなかったりすると、ネットやゲームに居場所を求めて依存状態になる人は少なくありません。

進学先で新しい環境に慣れておらず、まだ友達ができていない時。

定期考査や実力テスト、模試、塾の試験でひどい点数を取るなど、成績が振るわずに落ち込んだ時。

クラスや部活、サークル等の人間関係がうまくいかず、学校の中に居場所がない時。

保護者が過干渉、或いは無関心などで、家庭内に居場所がない時。

どれも共通するのは、ストレスやプレッシャーがあり、居場所がないことです。自分に対して肯定的になれず、不安を抱えていることです。

大切なのは、困った時に声を上げて助けを求めること。助けを求められたら、助けが必要な人を支えることです。

スマホやゲーム、SNSは、心が健やかで物事がうまくいっているとき、問題なく生活を送れている時には、娯楽や癒やしとして機能します。しかし、傷ついて心に隙間ができ、物事がうまくいかず逃避したいと考える時、何かにつまずいてしまった時、スマホやゲーム、SNSが思わぬ障害になることもあるのです。スマホやゲーム、SNSといい付き合いを続けることには、決して終わりはないのです。


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意志の力を強くする方法は……


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