沸騰!エンタメビジネス#6Photo:Emanuele Cremaschi, SOPA Images/gettyimages


主要ゲーム会社の第3四半期決算が出そろった。中でも注目すべきは、Switch2発売後最初の大型商戦となった年末商戦の結果が出た任天堂と、大型タイトル発売前にもかかわらず大幅な増収増益となったカプコンだ。そして好業績にもかかわらず低迷する株価の理由とは?『沸騰!エンタメビジネス』の本稿でアナリストが読み解く。(東洋証券アナリスト 安田秀樹)



日本市場で累積478万台販売したSwitch2は

1台2万5000円の「逆ザヤ」が発生している

 任天堂の2026年3月期第3四半期決算が発表された。売上高は1.9兆円で前年同期比99.3%増、営業利益は3003億円で同21.3%増と大幅な増収増益となった。Switch2ハードウエアが好調だったことで売り上げはほぼ倍増となったが、営業利益の伸びは売上高に比べると低調な結果になっている。これは後述するが日本のSwitch2の販売が好調だったことで、ハードの採算が悪化したためである。また、第3四半期単体でのSwitch2の販売台数は701万台。Switchの発売初年度の18年3月期第3四半期の販売台数723万台を下回る結果で、やや物足りない印象を受けた。


 もう少し掘り下げて日本の動向から見ていこう。Switch2の発売から、正月商戦期出荷も含む12月末までの国内実売台数は478万台と公表された。事前のファミ通調べでは378万台で、決算時の公表値と100万台もの差が出たが、これは、任天堂がSwitch世代から本格化させた直販サイト「マイニンテンドーストア」の影響によるものと考えられる。投資家向け説明会でも古川俊太郎社長は、世界的な需要増を見越して万全の準備を整えていた旨を語っており、その成果が日本市場で顕著に表れた形だ。


 国内ではSwitch2は、4万9980円で販売されている。ちなみに米国の希望小売価格は449.99ドル(約6万4000円)で、国内の価格が戦略的に設定されていることが分かる。背景には、深刻化する転売対策や「ゲーム機は高額だと売れない」という業界の固定観念があるのだろう。結果として、日本市場ではハードの製造原価が販売価格を上回る逆ザヤ状態が拡大し、売れれば売れるほど採算が悪化する構造に陥っている。


 筆者の推定だが、Switch2にはエヌビディアのGPUと価格が高騰しているメモリなどを含む半導体で300ドル程度、電池や外装などに80ドル以上、そして加工賃その他含めて合計で400ドル(約6万5000円)程度のコストがかかっていると見積もっている。さらに、任天堂から小売店への販売価格を4万1000円と推定すると、1台当たり2万5000円程度の赤字になっていると考えられる。さらに、日本は欧米に比して装着率(ハード1台当たりのソフトウエア販売本数)が低いことも、収益性を圧迫する要因となっている。


 売れれば売れるほど赤字という状態を改善するには、ハード価格の適正化が欠かせない。「ゲーム機は高額だと売れない」との定説は、実態を表していないと筆者は考えている。この理屈では、初代Switch(3万2978円)より高価なSwitch2が、なぜこれほどの人気を博しているのかを説明できないからである。同一モデルを今値上げすることに抵抗があるのなら、今後人気ソフトに合わせた特別デザインモデルや、色違いモデルを投入するなど手段はある。Switch2の実質的な単価アップと採算改善は必須だ。


任天堂の株価下落要因にもなった「欧米市場のクリスマス商戦でのSwitch2販売不調」の真相はどうだったのだろうか。実はSwitch2に関しては、Switchの発売時とは異なるソフト販売戦略が取られていたという。さらに、その採算性について今後の気になる課題も出てきた。大幅な増収増益となったカプコンの決算分析も併せて、次ページからより深掘りしていこう。


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