「紅の砂漠」は、Pearl Abyssが手がけたオープンワールド・アクションゲーム。3月20日に発売予定で、対応プラットフォームはPlayStation 5、Xbox Series X|S、PCとなっている。

 Pearl Abyssの代表作といえばMMORPG「黒い砂漠」だが、最新作の「紅の砂漠」はシングルプレイ専用のタイトルとなる。大規模なマップをはじめ、多彩なアクション、骨太なボス戦、豊富なプレイアクティビティなど、ボリューム満点、かつ遊びごたえのある内容が特徴だ。

 2026年を代表するAAAタイトルとして、世界中のゲーマーから注目を集めている「紅の砂漠」。筆者は、本作の先行プレイレポートを2度にわたって執筆してきた。今回は製品版(PC版)のコード提供があったので、プレイレビューをお届けしたい。

【公式発売トレーラー | 紅の砂漠】

ダークファンタジー色全開の冒険譚! ゆっくりと進行する展開は人を選ぶかも?

 「紅の砂漠」の舞台は、北欧の雰囲気が漂うファイウェル大陸。主人公のクリフは傭兵集団「灰色たてがみ」に属する傭兵で、仲間や居場所を奪った「黒い熊」に復讐する旅へと赴く。生き残った仲間を集め、黒い熊を討伐することがメインの目的となっている。

 冒頭の流れをざっと説明すると、「黒い熊が灰色たてがみの拠点を襲撃」→「一部の仲間はどうにか逃げ出せたものの、クリフは黒い熊のボスに殺され、崖から突き落とされる」→「川に落ちたはずだが、なぜか謎の空間『アビス』へ飛ばされる」→「アビスの奥へ進むと、ファイウェル大陸で目覚める」といった具合だ。

 「アビス」とはなにか、なぜクリフを蘇生させたのか。怒涛と謎に満ちた幕開けである。ここから、クリフの旅が始まるというわけだ。

 メインクエストを進めるにつれ、黒い熊以外の敵やアビスなどが深く関わっていき、ダークファンタジーらしい壮大さが増していく。単なる復讐劇に留めない、壮大な冒険が待ち受けている。迫力満点のアクションシーンや、プレイヤーの想像力を刺激させる幻想的な場面などが満載で、映画を観ているような感覚でストーリーに没頭できるはずだ。

敵は黒い熊だけではない。奇妙な仮面を被った蛮族などの敵対勢力と対峙することになる不可思議なギミックや空島など、幻想的な空間「アビス」。アビスに隠された秘密が関係している……?

 ここで、「紅の砂漠」は良くも悪くも人を選ぶゲームであるかもしれない、という点を伝えておきたい。その一例として、スローテンポなストーリー進行が挙げられる。

 プロローグにて話は怒涛の展開を見せるも、チャプター1以降は派閥との出会い、仲間の捜索、周辺で起きたトラブルの解決など、チュートリアル的な展開が続く。序盤は世界観やキャラクターの掘り下げに重きを置き、核心的な部分は徐々に明らかになっていく流れだ。

 加えて、一部のメインクエストは「勢力クエスト」(サブクエスト)をクリアしないと開放されない仕組みになっている。つまり、メインクエストだけをやり続けてストーリーをガンガン進めるようなプレイはできず、寄り道が必須になるケースもあるというわけだ。

ストーリー進行は比較的スローテンポ。とくに序盤は本題と関係ないクエストがしばし続くメインクエストだけでなく、「勢力クエスト」というサブクエストも用意されている

 しかしこのスローさは、「紅の砂漠」をじっくり学べるという点でメリットになっているとも捉えられる。さまざまなクエストを経てゲームの知識が深まると同時に、没入感も少しずつ高まっていくからだ。さらに結末への期待値も上がるため、最後までプレイしたいという気持ちに駆られる。

 「紅の砂漠」のような壮大さがウリのゲームは、架空の世界に没入できるかどうかが肝要だろう。筆者としては、ストーリーの進行が遅いおかげで、世界観の理解や各キャラクターの把握が自然とできて、かえって本作に没入しやすくなったと感じている。ロールプレイが捗る点において、スローテンポの展開は英断だったと筆者は評価したい。

「ファンタジー世界で遊び、自由に生きる」という醍醐味

 プレイヤーはクリフを操作し、ファイウェル大陸内で繰り広げられる物語を進めることになる。ちなみに、途中からは「デミアン」や「ウンカ」が操作キャラクターとして登場し、好きなタイミングで彼らと交代できるようになる。基本はクリフを操作し、ときどき別のキャラクターに変更して遊ぶイメージだ。

クリフとなって、ファイウェル大陸の物語を体験することになるストーリーを進めると、クリフ以外のプレイアブルキャラクターが登場する。執筆時点では「デミアン」と呼ばれるプレイアブルキャラクターを確認できたデミアンはレイピアや大剣、銃を扱うキャラクター。彼女専用の武器とスキルで敵と戦っていく

 本作は復讐の物語を読み解くだけでなく、派閥と交流する、住民たちの問題を解決する、ミニゲームを遊ぶ、傭兵の派遣など、多様なアクティビティを体験できる。どれも遊びごたえは十分にあり、主要の目的を忘れてどんどん寄り道をしたくなったほどだ。

 「紅の砂漠」はできることが山ほどある。ストーリーと寄り道要素を合わせるとボリュームは豊富そのもので、オープンワールドゲーム特有の満腹感を味わえるようになっている。

 加えて、自由度の高さも留意すべきところだ。これまで多くのオープンワールドゲームをプレイしてきたが、「紅の砂漠」は「え、そんなことまでできちゃうの?」と驚くぐらい自由度が高い。例を挙げると、素材を集めて料理を作る、つるはしで鉱石を採取する、壁を登る、乗り物を操縦する、一部の動物をなでなでする、NPCに挨拶するなど。

 これ以上挙げたらきりがないが、できることの多さと自由度の高さのマッチングが最大の驚きであった。ゲームの進め方はもちろん、攻略方法も自由。あと、犯罪に手を染めても構わない(脅迫や窃盗など)。どのように過ごすかは、プレイヤーの裁量に委ねられているわけだ。

 記事執筆時点ではプレイをはじめてまだ20時間以上くらいであるが、終わりがまったく見えない状況だ(ボスに苦戦している点も含む)。社会人泣かせの側面も強いが、長く遊べると考えれば申し分ないボリュームであると言えよう。とにかく、「剣と魔法のファンタジー世界をたくさん遊び、自由に生きる」という夢のようなゲームであると感じた。

ファイウェル大陸の広大さに脱帽。自らの足で探索する楽しさがここに

 「紅の砂漠」で最も目を引く部分は、美麗なグラフィックだ。本作はPearl Abyss独自のゲームエンジン「BlackSpace Engine」を採用し、リアリティあふれるマップやキャラクター、シームレスなオープンワールド体験を形作ることに成功している。リアルで緻密、そして美麗な表現はAAAタイトルにふさわしい仕上がりだ。ゲームであるとわかっていても、同社が描く唯一無二の美しさに見惚れてしまった。

 BlackSpace Engineで創造されたファイウェル大陸は、想像以上に驚く広さだった。前回のプレイレポートでも触れたが、その規模は地平線が見えないぐらい。あまりの規模感と美しさに、もしかしたらプレイヤーの多くが言葉を失ってしまうかもしれない。もちろん、筆者も言葉を失った人間のひとりである。

地平線が見えないぐらいに広いファイウェル大陸ほぼ全域を自由に探索できる。一日ですべてのマップを網羅するのは困難だろう

 大陸には自然が豊かなエリアや多種族が暮らす都市、謎めいた遺跡など、特色のあるスポットが多く存在する。すべてのスポットを探索するには、かなりの時間を費やすことになるだろう。

 だが、与えられた自由を使って広大な大陸を探索できるところが、オープンワールドの醍醐味。圧倒的な自由を謳歌できることと、ファンタジー世界を旅しているような感覚が味わえることに、唯一無二の喜びを見出すことができた。

幻想かつ雄大なファンタジー世界の景観に心を奪われる中世のファンタジー作品らしく、馬に乗ってマップを移動する

 一方で、移動の手間が少し気になってしまった。ゲーム序盤の基本的な移動手段は徒歩か馬の二択(後にドラゴンとロボットに搭乗できるようになる)。また「アビスの痕跡」と呼ばれるポイント同士ではファストトラベルによる移動が活用できるが、まず広大のマップのなかから「アビスの痕跡」を見つけ出さなければ使用できないため、少々「面倒くさい」と感じてしまうこともあった。

 この移動の面倒さも「紅の砂漠」が人を選ぶゲームである理由のひとつになるだろう。ただ、道中で予期せぬ発見をするなどの機会も多いため、たとえ面倒であっても「何かがあるかもしれない」と探索したくなるようなつくりになっている。どこか、旅の醍醐味に通じるものがある。移動の手間を楽しめるかどうか、そこが本作の評価を左右するポイントになるかもしれない。

マップの各地には、瞬間移動ができる「アビスの痕跡」が点在しているマップを開き、アビスの痕跡にカーソルを合わせて「ワープする」のボタンを押すだけでOKバリエーション豊かな戦闘スタイル。慣れれば「俺TUEEE」が味わえる

 「紅の砂漠」のもうひとつの魅力は、技のバリエーションが豊富な戦闘だ。剣や斧、槍などの武器をはじめ、素手による格闘技、弓などの遠距離攻撃、「精神」を消費して発動できる特殊スキルと、攻撃手段はかなり多め。複数の技を組み合わせたり、コンボを発動したりと、独自の戦い方を生み出せるところが面白いと感じた点だ。

剣や槍などの武器を駆使して敵と戦っていく格闘技も使える。殴る蹴るだけでなく、投げ技やドロップキックなどもある弓による遠距離攻撃。Xbox ワイヤレス コントローラーだと左スティックを押しっぱなしで構え、スティックを離すと矢を放つ。珍しい操作方法なので慣れが必要だ

 各種技の操作は簡単で、1ボタンもしくは2ボタン同時押しがほとんど(ゲームパッドの場合)。格闘ゲームのように方向キーをいじる必要はない。大体の敵は通常攻撃と強攻撃だけでなんとかやり合えるが、ボスに有効なスキルもいくつか存在する。そのため勝利を掴むには、習得したスキルをできる限り記憶する必要がある。

 たくさんのスキルを覚えることもまた、「紅の砂漠」が人を選ぶゲームである理由のひとつに数えられる。戦闘用のスキルに加えて、移動時のスキル、謎解き用のスキルもあり、覚えるべきものは割と多い。操作自体はシンプルなのだが、攻略の都合上、「スキルを覚える」という手間が発生してしまうわけだ。

ゲームパッドかキーボードを選べるが、ゲームパッドのほうが操作しやすいスキルツリーを更新し、新しいスキルをどんどんアンロックしていく。ついでに、体力や気力などのステータスも強化しておきたい

 ただし、スキルを覚えれば大きなアドバンテージを得られるほか、異世界モノのような「俺TUEEE!」を味わえるようにもなる。覚えたスキルで敵の集団を一掃したときの快感たるや……。無双アクション風の爽快感が、実に心地よいのだ。適当でもいいのでガチャガチャ触ってみることが肝心。いろいろ試しながら少しずつ覚えることが本作を楽しむコツだ。

スキルを覚えれば覚えるほど、クリフは強くなっていく。主人公の成長がやりがいにつながる

 なお、本作にはレベルの概念がない(愛馬はレベルの概念がある)。成長要素については、「アーティファクト」と呼ばれるアイテムを消費してスキルを習得していく形だ。アーティファクトはクリフの経験値を一定値までためる(レベルアップの代わり)か、クエストの報酬などで入手できる。

 レベル重視のRPGと違い、本作は「装備の強化」「アンロックした技の数」「覚えたテクニック」「敵の攻撃パターンの把握」などが攻略のカギを握る。つまるところ、プレイヤーの腕が試されるというわけだ。これらは、後述するボス戦に関わるところでもある。

「アーティファクト」と呼ばれるアイテムで、各スキルをアンロックしていく。アーティファクトは報酬でもらう、経験値を一定値までためることで入手できる素材を集めて鍛冶屋で装備を強化していく(焼き入れ)各装備に、さまざまな効果が付与された「アビスギア」を装着できる思っていた以上に骨太なボス戦。プレイヤーの腕が最も試される

 過去記事を読んでいる場合はすでにご存じかもしれないが、「紅の砂漠」のボス戦はかなり骨太だ。雑魚敵はそこまで難しくないが、ボス戦はその比ではなく、ソウルライク系のゲームを彷彿とさせる。ボス戦こそ、プレイヤーの腕が最も試される場面であり、好き嫌いが最も分かれやすい場面でもある。

興奮度&緊張感MAXのボス戦。ソウルライム系ゲームを連想させる難易度が特徴だ

 「紅の砂漠」のボスはガードのタイミングが難しいものから、致命傷必至なものまで、ありとあらゆる攻撃を執拗に仕掛けてくる。さらにボスの挙動はものすごく激しいため、攻撃パターンを見極めたり回避したりするのもなかなかに難しい。そのうえ二戦、三戦するパターンがあるなど、最後まで油断できない場面も顕著だ。

 ちなみに、本作は難易度の変更ができない。そのため、「オープンワールドゲームだから戦闘自体の難易度はそこまで高くないはず」と軽い気持ちで挑むと痛い目に遭う。

本作のボスは動きが多彩なうえに火力も高いため、開始してすぐに敗北することも……

 本作のボス戦が難しい理由はもうひとつある。それは、特殊な倒し方が求められるボスの存在だ。ボスの弱点を自力で見つけたり、ギミックを使って倒したり、習得したスキルを活用したりと、試行錯誤するべき場面がいくつかある。

 だが、倒し方のヒントはそこまで多くない(わかりづらい)ため、あたふたしているうちにやられてしまうことも多々あった。戦闘中に倒し方を模索するところも、本作の難しいと感じた部分だった。オープンワールドゲームを気軽に楽しみたい人にとっては苦痛の種になり得るかな、と思う。

特殊な方法でないと倒せないボスも存在する。あれこれ試行錯誤し、答えを見つけ出す必要がある

 ゲームオーバーになると、戦闘を最初からリトライするか、アイテムを使ってその場でコンテニュー(体力が30%回復した状態で復活)するか、チェックポイントまで戻るかの3択を選ぶことになる。ただ、ソウルライクのように負けたら何かを失うわけではないため、デメリットなしで何度も再戦できるところは良い。

 本作のボスは思っていた以上に難しいが、手に汗握る、緊張感たっぷりの戦いを体験できるところは最大の魅力だろう。トライ&エラーを積み重ねて攻略法を見つけ出し、自力で倒したときの達成感はひとしおだ。

ゲームオーバー画面。「アイテムを使ってその場で復活する(ただし30%回復した状態)」「最初からやり直す(リトライ)」「チェックポイントへ引き返す(諦める)」の3択を選べる「ファンタジーらしい」と、なんとなく納得できる不便さ

 「紅の砂漠」は、剣と魔法のファンタジー世界を生きるという疑似体験がウリとなっている。いわば、ロールプレイだ。ファンタジー作品を心から愛する人にとって、本作は理想の遊び場であると言っていいだろう。

主人公になりきって中世のファンタジー世界を生きる。できることが多いので、ある意味ライフシミュレーター的な側面もある自分の足で世界を練り歩き、面白い発見を積み重ねていく

 そんな「紅の砂漠」の特色は、言ってみれば”不便なこと”も多い。これまで述べてきたように、細かいところで本作独自の面白さを感じられる一方、移動や生活においては面倒に感じるようなシステムが採用されていることもある。だが、そんな不便さをあえて取り入れたことで、「中世ダークファンタジーの生活感をなんとなく再現する」ことに成功しているのではないかと筆者は考える。

馬での移動が面倒、素材の回収が面倒といった不便さが目立つ

 プレイしてみると、確かに「紅の砂漠」は面倒くさいゲームである。しかし、「面倒くさいけど、ファンタジー世界の生活ってこんな感じじゃない?」と納得できた瞬間、妙な説得感が生まれるのだ。類似する作品を挙げると、西部劇を舞台にした「レッド・デッド・リデンプション 2」、中世のボヘミアを舞台にした「キングダムカム・デリバランス」など。

 世界観にマッチする不便さを設けたことで「〇〇らしさ」を享受でき、「なんとなくリアリティ」を味わえるようになっている。「紅の砂漠」でいえば「中世ファンタジーらしさ」だ。数々の不便さと向き合うことで、「自分は中性ファンタジーの世界を生きているんだ」となんとなく実感できるようになる。その感情にたどり着くまで、結構時間はかかったものの、慣れたら面白さが加速していき、やがて本作の虜になるだろう。

 この不便さは、好きな人は好き、苦手な人は苦手ときっぱり評価が分かれるように思う。筆者はプレイを進めるうちにポジティブに感じるようになったが、果たしてどうだろうか。

慣れるまでに時間がかかるものの、魅力に気づいたら面白さが加速するタイプのゲームだ。20時間以上遊んでやっと面白さに気づけた筆者の様子をスクショまとめ:癖が強いけれども、AAA級のクオリティに引き込まれる

 「紅の砂漠」は広大なオープンワールドや自由度の高いゲーム性、美麗なグラフィック、緊張感あふれるボス戦などが魅力のタイトルだ。世界観の作り込みが非常に緻密で、中世ファンタジーの奥深さを心ゆくまで堪能できるのが素晴らしい。圧倒的な没入感と自由を同時に味わえるゲーム性は見事の出来で、まさしくAAA級であると感じた。

 その反面、世界観にマッチした不便さとボス戦の難易度は、プレイヤーの好みがはっきり分かれる部分だ。再三にわたって述べてきたが、本作は人を選ぶゲームで、面白さがわかるまでかなりの時間を費やすことになるだろう。そのため、筆者としては「誰でも楽しめるから超おすすめ!」と言いづらいのが正直な気持ちである。

 とはいえ、「黒い砂漠」のエッセンスをフル活用させ、贅沢この上ない作品を作り上げたことは称賛に価する。中世のファンタジー世界を生きるという贅沢を味わったのはいつぶりだろうか。剣と魔法の世界を自由に歩く、多種族の住民と触れ合う、人やモンスターと戦うなど、現実離れした体験に歓喜する自分がいた。

 ダークファンタジーの主人公になりきる体験を味わってみたい……。そんな夢を形にしてくれた作品が、3月20日に発売される「紅の砂漠」だ。一癖二癖あるものの、面白さに気づいた瞬間、かけがけのない感動と興奮が心に深く刻みこまれることだろう。

 ファイウェル大陸の旅路は限りなく長く、そして険しい。その一歩を踏み出すかどうかは、プレイヤーの冒険心に委ねたい。

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