気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Mana Games開発、PC/Mac向けに1月23日にリリースされた本格テニスシミュレーション『Tennis Elbow 4』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、2013年にリリースされ、Steamでは「非常に好評」の評価を受けている『Tennis Elbow 2013』の続編となる本格テニスシミュレーション。本作では物理演算が見直され、様々な難易度やルールでシンプルながらも奥深いテニスを楽しめます。日本語にも対応済みですが、開発者曰くAIを使用したもので完璧ではないため、もし日本語訳のクオリティ向上に協力してくれる方がいればこちらから直接連絡して欲しいとのことです。
『Tennis Elbow 4』は、3,090円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
EmmanuelEmmanuel “ManuTOO” Rivoireです。Mana Gamesおよび『Tennis Elbow』シリーズのソロ開発者です。1990年代半ば、第一作目となる『Tennis Elbow』(DOS版です!)を雑誌付録のCDで配布したことからキャリアをスタートし、これまで30年以上にわたってゲーム開発を続けています。フランスを拠点に活動しており、キャリアのほとんどをインディー開発者として、デザインやプログラミングなど技術面の多くを自分で担当してきました。
ここ最近で特に強い印象を受けたゲームは、『Disco Elysium』です。奥深い文章表現や政治的・哲学的なテーマを扱いながらも、ゲームとしてしっかり楽しめる作品である点が素晴らしいと感じました。ゲームは娯楽であると同時に、思想を表現するメディアにもなり得ることを示す良い例だと思っています。
また、『Prey』も大好きです。まるで多くの謎に満ち、放棄された宇宙ステーションで実際に生きているかのような感覚を味わえました。さらに、『Kingdom Come: Deliverance』もお気に入りです。子どもの頃の「騎士になりたい」という夢が叶ったような気持ちになりました!(笑)
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Emmanuel『Tennis Elbow 4』の開発における主な目標は、見た目だけでなく、プレイしたときの感覚まで含め、現実のテニスにできるだけ近づけることでした。多くのテニスゲームがタイミング重視のミニゲームや強い自動アシスト機能に依存しているのに対し、『Tennis Elbow』はポジショニング、ショットの選択、先読み、リスク管理といった、実際のテニスに近い要素に重点を置いています。テニス経験のあるプレイヤーからは、実際のコートに立っているときと同じような気持ちや思考を味わえる初めてのゲームだという声をよくいただきます。
このアイデアは、私自身の経験から自然に生まれました。私は実際にテニスをよくプレイしており、これまでのゲームが現実のラリーの戦術的な奥深さや多様性を十分に再現できていないことにずっと不満を感じていたのです。
そのため、このデザイン思想により、このゲームは一般的なAAAのテニスゲームに比べて最初はやや複雑に感じられるかもしれません。AAAタイトルはどれも大抵すぐに楽しめるアーケードスタイルになっていますからね。しかし本作の場合、少し時間をかけてシステムを理解すれば、非常に自然でプレイしがいのある体験となり、特に戦術性の高いゲームプレイが好きな人にとっては大きな魅力となるでしょう。

――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Emmanuelはい、元々インスピレーションを受けたのは、1990年代初頭に遊んだ『Great Courts 2』です。このゲーム自体はとても楽しかったのですが、一つだけ不満がありました。それは、まともなパッシングショット(訳注:ネットに出てきた相手の両サイドをグラウンドストロークで抜くショット)を打つことがほとんど不可能だったことです。
実際のテニスにおいてパッシングショットは、特にネットに出てくる相手に対しての基本的かつ重要な戦術です。しかし『Great Courts 2』では、そうした状況を説得力をもって再現できるシステムが用意されていませんでした。
それがきっかけで自分でテニスゲームを作りたいと思うようになり、最初の目標はとてもシンプルでした。「本物のパッシングショットを打てるようにしたい」ということです。そこから自然とゲームデザインは広がっていき、既存のゲームで不足していたり単純化されていた、テニスの様々な要素を取り入れていくことになりました。
また、本作は『Advantage Tennis』からも影響を受けています。このゲームでは、プレイヤーがボタンを押さなくても自動的にボールを打つシステムになっており、とてもシンプルではありましたが、多くのテニスゲームに見られるタイミング重視のシステムよりも、実際のテニスに近い感覚がありました。なぜなら、テニスは本来リズムゲームではないからです。
――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Emmanuel最もストレスが大きく、印象に残っている出来事の一つは、PS版のリリース時でした。テスト段階では問題なく動作していたのですが、実際にプレイヤーの手に渡った後、多くのModを使用したり衣装を編集した際に深刻なクラッシュが発生する問題が見つかったのです。これは、Unityとコンソール特有のCPUとGPUで分割されたメモリ構造に関係する、複雑なメモリ管理の問題でした。
約4週間にわたり、このバグの解決にほぼすべての時間を費やすことになりました。すでにゲームを購入してくれたユーザーがいる状況だったため、プレッシャーも非常に大きかったです。Unityのサポートもあまり役に立たなかったため、エンジンのメモリ管理の仕組みを自分で調べ上げ、独自の回避策を構築する必要がありました。最終的には、幸いにもほとんどのケースで問題を解決することができました。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Emmanuelプレイヤーの皆さんからのフィードバックは非常に励みになるものとなっています。多くのテニスファンから、『Tennis Elbow 4』は実際にテニスをプレイしている感覚に最も近い体験だという声をいただいており、特にフットワーク、ショット選択、ポイントの組み立てといった点が高く評価されています。
また、対戦好きのプレイヤーたちからは、オンラインモードの奥深さや、単なる反射神経ではなく、スキルや判断力が重要になるゲームデザインが好評です。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Emmanuel『Tennis Elbow Manager 2』と『Tennis Elbow 4』に9年間取り組んできたので、現在は『Tennis Elbow 4』から徐々に手を離しつつある段階です。今後は、主に報告されたバグの修正やちょっとした快適性向上に対応していきます。
小さな新機能をいくつか追加する可能性もありますが、現時点ではっきりとした計画はなく、ユーザーからの要望の多さや実現可能性に応じて判断していく予定です。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Emmanuelはい、もちろんです。プレイヤーの皆さんは、『Tennis Elbow 4』の配信や動画投稿、そしてYouTubeやTwitchでの収益化も自由に行うことができます。
本作を紹介したり、遊び方を教えたり、エキサイティングな試合を共有してくれたりするコンテンツクリエイターの皆さんには、とても感謝しています。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Emmanuel日本の読者の皆さん、プレイヤーの皆さん…『Tennis Elbow 4』に興味を持っていただき、本当にありがとうございます。日本では、学校の部活動やプロ選手の活躍を通じて、テニスがとても身近なスポーツであることを知っています。私の作ったゲームが、皆さんにとって満足できるテニス体験を提供できるとしたら、大変光栄です。
たとえ実際にテニスをプレイしていなくても、このゲームを通じて、コートに立つ感覚や、ポイントを組み立てる楽しさ、一球一球に全力で向き合う緊張感を感じていただけると思います。
『Tennis Elbow 4』のコートでお会いできるのを楽しみにしています!
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に900を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。
