米国時間2026年4月22日から4月24日まで,Googleのクラウド部門である「Google Cloud」は,年次開発者会議である「Google Cloud Next 2026」(以下,GCN 2026)を,米ラスベガスで開催した。
現在,ソフトウェア開発のテーマは「AI」だ。このイベントは,単にAI処理を行うのではなく,エージェントAIによるテクノロジーの変革が,どのように開発とサービスを変えるかということを,幅広く議論する場となっていた。
ラスベガスで開催されたGCN 2026の主講演会場
Jack Buser氏(Global Director for Games,Google Cloud)
AIによるテクノロジーの変革は,もちろん,ゲームも例外ではない。
イベント期間中に,Google Cloudでゲーム担当グローバルディレクターを務めるJack Buser(ジャック・ビューザー)氏に単独取材する機会を得た。
Buser氏は,30年近くゲーム業界に関わり,「PlayStation Network」などの構築を担当したのち,2021年にGoogleに移った。以来,Googleの中で,ゲームに関連するビジネスのグローバル戦略を担当している。
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GDC Festival of Gaming 2026では,基調講演に変わる新しい試みとして開催されるセッションシリーズ「Luminaries」にて,Googleのゲーム部門の統括責任者であるジャック・ビューザー氏が登壇した。開発費の増大や成長停滞を打破するためにAIを活用し,ライブサービスを「Living Games」(生きたゲーム)に変革させていくことを提唱している。
[2026/03/11 18:49]
「現在,1990年代に続く大きな変革がゲーム業界にやってきている」とBuser氏は話す。もちろんその中核にあるのはAIだ。
だがそれは,おそらく多くのゲームファンがイメージするものとは違うだろう。
今,ゲーム業界で導入されつつあるAIとはどういうものであり,なぜ,どこに必要とされているのかを聞いた。
ゲーム業界はなぜ危機を迎えているのか
4Gamer:
ゲーム業界の改善のために,いうまでもなくAIは非常に重要な要素だと考えています。AIを用いたゲーム業界の現在のトレンドについて,お聞かせいただけますでしょうか?
Buser氏:
状況を振り返るところから進めましょうか。
現在のゲーム業界を見ると,2025年の収益は過去最高で,ほぼ2000億ドル(約31兆8400億円)に達しました。
しかし,ゲーム会社の収益性に目を向けると,2021年以降は,年平均で7%低下しており,パンデミック前の水準に戻ってしまっています。ビジネスモデルが崩壊しつつあるため,多くのゲームがキャンセルされ,スタジオが閉鎖され,レイオフが起きているのです。
4Gamer:
たしかに非常に厳しい状況です。
Buser氏:
原因を掘り下げてみると,理解すべきトレンドがいくつかあります。
まず,世界全体でのゲームプレイ時間を見ると,半分以上が発売から6年以上経過したゲームに費やされています。
そして,新しいゲームの開発コストは,2017年に対してほぼ2倍になっています。つまり開発スタジオは,過去の半分以下のプレイ時間を獲得するために,2倍のコストをかけている状況です。
要は,これが「ビジネスモデルが破綻している」理由です。
ビジネスの立て直しを考えたとき,AIは課題を軽減するうえで,十分実用的な成熟度に達しています。
4Gamer:
すなわち,もう十分に使えるものである,と。
Buser氏:
はい。私たちはAIの活用において,大きく3つのトレンドがあると考えています。
ひとつめは,ゲーム開発におけるAIです。
AIは開発パイプラインに組み込まれ,デバッグやクラッシュの修正など,人間がやりたがらない低価値で非創造的な作業の負担を減らすために使われています。これにより,開発チームはクリエイティブな活動に集中できます。
2つめは,ゲームビジネス,あるいはゲームパブリッシングにおける活用です。
マーケティング活動を加速させるために,AIを活用します。開発チームは,プレイヤー層と効果的にコミュニケーションを取り,その行動を深く理解できるようになりました。最終的にプレイヤーから学んだ知見は,より良いゲームを作るために役立てられます。
そして3つめは,プレイヤー体験。
AIがランタイムに組み込まれ,これまでに見たことのないような新しい体験をゲーム内に創り出しています。
4Gamer:
なるほど。
Buser氏:
GCN 2026では,これら3つのトレンドに沿った発表をいくつか行っています。
カプコンでGM兼VP of Engineeringを務める井上真一氏。GCN 2026では,AIを使ったゲームの品質保証について発表した

たとえばゲーム開発に関しては,カプコンがデバッグと品質保証にAIを活用して,ゲームのクラッシュなどのバグを発見することで,チームをクリエイティビティに集中させているという発表を行いました(※カプコンの事例については,別途の記事掲載を予定している)。
ゲームにおけるAIというと,多くの人がAI生成のアートを思い浮かべます。しかしそれは,実際には非常に小さなユースケースに過ぎません。
AIが最も力を発揮するのは,ゲーム開発パイプラインにおける摩擦が高く,重労働な部分を取り除くために使われるときです。
ゲームでのリアルタイムなAI活用の例として,最近スクウェア・エニックスとの提携を発表しました。
それは,「ドラゴンクエストX オンライン」(以下,ドラクエX)におけるAIバディの取り組みです(※2026年3月末にクローズドベータテストが行われた「おしゃべりスラミィ」のこと)。
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スクウェア・エニックスとGoogle Cloudは3月18日,ゲーム業界における生成AI活用に関する記者説明会を開催し,その中で「ドラゴンクエストX」の対話型AIバディ「スラミィ」が発表された。ゲーム業界で,AIはどのように活用されていくのか。スクウェア・エニックスとGoogle Cloudによる説明会をレポートしよう。
[2026/03/21 20:00]
GCN 2026で堀井雄二氏が登壇,ドラクエXに実装される「おしゃべりスラミィ」についてスピーチした
親友になってくれるようなAIの仲間を持ち,バトルで応援してくれたり,ドラゴンクエストの世界との関係を深めてくれたりするというアイデアは,本当にエキサイティングです。
これらは,ゲーム業界で起きている全体的なトレンドを示す最近の発表のほんの一部です。
実は,ゲーム会社がプレイヤー体験の領域にAIを導入する最も一般的な方法は,「プレイヤーの安全性」(プレイヤーセーフティ)なのです。
4Gamer:
アンチチートなどの用途ですか?
Buser氏:
はい。アンチチート,プレイヤーの安全性,そして有害行為(トキシシティ)への対策です。
これも,AIの非常に一般的なユースケースです。有害なゲームコミュニティがあったり,チーターが多数存在したりすると,ゲームの継続率に悪影響を与え,ビジネス上の問題を引き起こすからです。
AIはこうした問題がコミュニティで発生する前に未然に防ぐことができるため,ROI(Return On Investment,投資利益率)が計算しやすいのです。
一方で,「ゲームアシスタント」や「スマートNPC」となると,各企業は「どれだけのコストをかけたいか」と「それがゲームの売上にどれだけ貢献するか」を独自に計算しなければなりません。
これはビジネス上の計算ですが,もちろんそれとはまったく別の,クリエイティブ面での計算もあります。
そのためゲーム会社は,この問題にどう対処するかについて,いくつもの異なるアプローチを取っています。これが,ゲーム開発者との間で交わされる最も興味深い技術的な会話のひとつになっています。
一方で,ゲームプレイ中のリアルタイムに発生する大規模なAI推論について考えると,解決すべき3つの課題があります。
ひとつめはスケーラビリティです。何百万人ものプレイヤーがいるゲームの規模に合わせて,拡張できなければなりません。
2つめはコストです。費用対効果の高い方法でスケールさせる必要があります。
3つめはレイテンシです。ゲーム内でAIとやり取りするときは,リアルタイムで応答する必要があります。返答を何分も待つことはできないので,ゲーム内で高速,かつリアルタイムな処理が求められます。
これら3つの課題を解決する必要があります。
とはいえ,実は,ゲーム会社がこれまでに行ってきたことの中に,これらの課題解決のヒントがあります。
私たちが過去に解決した最も一般的な課題のひとつが,「ゲームサーバー」の概念です。
ゲームサーバーとは何かというと,クラウド上で実行され,マルチプレイヤーゲームを機能させるゲームの巨大なシミュレーションです。全員で一緒にゲームをプレイするとき,すべてが同期され,皆が同じ世界の中で活動できるようにするものです。
ゲームサーバーで解決しなければならない3つの問題は,スケーラビリティ,コスト,レイテンシです。これは実質的に,AI推論とまったく同じコンピューターサイエンスの問題なのです。
多くの人がすでに「AIで作られたゲーム」をプレイしている
4Gamer:
ゲームにおけるAIでのコーディングについてはいかがですか?
ゲームのコーディングは,通常のプログラミングと比べて,非常に特殊な性質があると思います。ゲーム開発におけるAIコーディングをどう見ていますか。
Buser氏:
AIを用いたコード生成は,ゲーム開発パイプラインにおいて非常に一般的なユースケースです。
2025年の夏,gamescom 2025の直前に,我々は多くのゲームスタジオを対象にアンケートを実施し,「ゲーム開発にAIを使用していますか?」と尋ねたところ,10社中9社が「はい」と答えました。
ほかの調査では,10社中5〜6社といった低い数字が出ることもありますが,どの調査を見ても非常に高い割合です。
コード生成やコードのデバッグは,今日の開発ツールチェーンにおいてごく一般的な用途です。実際,多くのプレイヤーが,AIを利用してコードを作ったゲームを,それとは気づかずにプレイしています。
ただし強調しておきたいのは,コード生成は,開発パイプラインにおける何百ものユースケースのひとつに過ぎないということです。開発者のパイプラインはそれぞれ異なり,それぞれが特別です。
そこで私たちは,ゲーム会社と協力し,プリプロダクションから本格的な開発,品質保証,リリースに至るまでの開発パイプラインを分析します。
そして,それをユースケースごとに細分化し,「開発パイプラインの中で,非常に負担が大きく,コストが高く,クリエイティブな価値が低い部分はどこですか?」とか,「クリエイティビティに集中できるよう,AIを使ってこれらの摩擦を取り除くにはどうすればいいですか?」という点を,開発者に問いかけています。
これが私たちの対話の基本です。
その答えは,デバッグであったりコード生成であったり,アイデア生成やキュレーション,あるいはオーディオに関するものなど,非常に多くのユースケースが存在します。
私たちは開発者ごとにカスタマイズされた対話を通じ,摩擦の多いペインポイントに焦点を当てたいと考えています。
ゲーム開発の規模や速度の変化で「健全だった時代」の体験を再び
4Gamer:
一部のプレイヤーは,AI生成コンテンツに対してある種のアレルギー反応を示しています。AIアセットがゲームにおいてはほんの一部に過ぎない場合でも,そのような反応はゲーム会社にとって大きな問題になり得ます。このアレルギー反応についてどのようにお考えですか?
Buser氏:
私たちが業界として直面している最も重要な課題のひとつです。なぜなら今日に,開発パイプラインでAIを使用することは,(ゲーム会社の)生存に関わる問題だからです。業界としての存続がかかっており,ビジネスモデルがこれほど破綻している以上,AIを活用しなければ私たちの多くは生き残ることができません。
しかし,業界におけるAIの利用と,それをプレイヤーに対して洗練された方法で伝える能力との間には,ギャップがあります。
AIは多くの意味を持ちますが,プレイヤーがAIと聞いて思い浮かべるのは,AIによって生成されたアート,とくに品質の悪いAIアートであることが多いのです。
ですから私たち業界は,開発パイプラインで実際に何が起きているのかを説明し,プレイヤーに理解してもらうために,明確な言葉を必要としています。
開発にAIを活用しているゲームのほとんどは,アートのために使っているのではなく,別の目的で使っているのです。
たとえば,私たちがカプコンと行っているようなAIによるバグテストによって,発売初日からより安定したゲームをプレイできるようになるという理解を,いつかプレイヤーに広められるかもしれません。
発売直後のゲームがバグだらけであることは少なくありませんが,初日から非常に完成度の高いゲームが提供されたらどうでしょう。AIはそれを可能にします。
また,プレイヤーは「お気に入りのゲームが発売されるまで,なぜこんなに時間がかかるのか?」と疑問に思っています。5年,7年,10年と待ち続けています。
もし,同じ品質のゲームを同じチームで,もっと早く,2年や3年で制作できたとしたらどうでしょうか。あるいは同じ期間で,ひとつだけでなく,5つのゲームを作れたとしたら?
Buser氏自身ヘビーなゲーマーであり,PS2時代を「最も健全だった時期」だと話す

私はよく,プレイヤーとしての自分の過去を振り返ります。
私は4歳の頃から,Atari 2600でゲームをプレイし続けてきました。私にとって,ゲームプレイヤーとして最も好きだった時期は,おそらくゲーム業界が最も健全だった時期です。それはPlayStation 2の時代です。
PS2の時代を振り返ると,ゲーム会社は毎年,複数のゲームをリリースしていました。新しいジャンルや新しいIPに挑戦していました。すべてのゲームが大ヒットを狙う必要はなく,実験的なゲームを作り,新しいアイデアをテストすることができました。
業界は健全でした。ひとつか2つのゲームがヒットすれば,ほかの3つは小規模なカルト的な人気でも構わなかったからです。
では,私たちの業界は,その時代に戻ることができるでしょうか? 私はできると信じています。
いつか,数億ドルのコストと7年の歳月をかけて作られるゲームが存在し続ける一方で,開発者の選択肢がそれだけではない業界を創ることができるはずです。
別の道を選択し,PS2時代のエキサイティングな時期に似た,より健全な業界を創り出せると思います。
4Gamer:
少し視点を変えて質問させてください。過去のゲームタイトルを,AIを用いて移植することについてどうお考えですか?
世の中には多くのゲームカタログがありますが,その多くは最新のコンソールやPCではプレイできません。AIを使って,過去のゲームを現代のプラットフォームに移行させることについて,どう考えていますか?
Buser氏:
私たちの顧客の間でも非常に一般的なユースケースです。
ゲームの歴史には,現代のプレイヤーがまだ体験していないゲームがたくさん詰まっています。私自身も巨大なゲームコレクションを持っており,ゲームをプレイし,集め,愛しています。
10年,15年前に作られたゲームの中には,今プレイしても信じられないほど素晴らしいものが数多くあります。
しかし,そのゲームを最新のハードウェアに移植するコストは高額になりがちで,リスクをともないます。
そこで,「AIを使ってその移植プロセスを容易にすることはできるか?」と問われれば,答えは「絶対にイエス」です。
実際,それは今日すでに行われています。多くのゲーム移植プロジェクトにおいて,プロセスを加速させる方法としてAIが大きく注目されています。
AIの活用として非常にエキサイティングな応用分野だと思います。
4Gamer:
開発者チームとAIの関係についてもお聞きします。
AAAタイトルのような大規模なチームがいる一方で,インディーゲームなどの小規模なチームもあります。もしAIを使えば,小規模なチームでもより大規模でコストのかかるゲームを作れるようになるのでしょうか?
Buser氏:
AIはすでに,小規模なインディーチームが,大規模かつクリエイティブなアイデアを具現化できることを証明しています。これは非常にエキサイティングなポイントです。
私たちはよく,「AIが小規模チームに実力以上の力を発揮させる」という言い方をします。つまり,大規模なゲームが支配する市場でも,小規模なチームによるゲームで競争できるようになるということです。
大規模な体験を創り出すために,巨大なAAAスタジオである必要はありません。これはゲーム開発にAIを活用することの,非常にエキサイティングな側面です。
一方で,カプコンのような非常に大規模なチームについても触れておきます。
彼らは開発パイプラインでAIを使用していますが,チームの規模はまったく同じであると明確に述べています。
チームの規模は同じでも,チームの各メンバーが繰り返しの退屈な作業にとらわれることなく,より大きなクリエイティブなアイデアに集中できるようになったのです。
つまり,これには2つの側面があります。
ひとつは,大規模なチームでも(AI活用によって),アウトプットを加速させることができるということ。もうひとつは,小規模なチームがはるかに大きなビジョンを実現できるということです。
繰り返しますが,これもPS2時代の感覚に似ています。
4Gamer:
非常に健全な状態ですね。
Buser氏:
非常に健全です。これこそが夢であり,約束です。
私がGoogleでこのストーリーを伝えることに情熱を注いでいる理由はこれです。
ゲームにおけるAIの話をすると,プレイヤーが裏側で起きていることを正確に把握できず,否定的な反応を示すことがあるのを知っています。
しかし,業界全体がより健全になり,プレイヤーにより多くの素晴らしいゲームを届ける結果につながるからこそ,業界としてこのストーリーを伝え,開発者がこれらのツールを使うことに社会的な理解を得ることが非常に重要だと考えています。
モバイルゲームはAI導入の先行例
4Gamer:
ゲーム業界におけるAIのマーケティングでの活用について,もう少し詳しく教えていただけますか?
Buser氏:
AIのマーケティングにおける活用は,ゲーム開発と同じくらい多岐にわたりますが,いくつか例を挙げましょう。
マーケティングの観点から最初にAIが使われた方法のひとつは,プレイヤーの理解でした。
何十万,何百万人もの人がプレイしているゲームでは,あらゆるプレイヤーのテレメトリ(行動データ)が収集されます。プレイヤーがゲームとどう関わり,何を好み,何を好まないかを理解しようとしますが,それは非常に時間のかかる手作業でした。
AIの台頭により,モバイルゲームで数年前から,いち早くAIが使われ始めました。彼らはAIを使って質問の答えを導き出し,プレイヤーの行動パターンを見出し始めました。
AIは開発者が思いもよらなかったような質問に答え始め,完全に盲点だったインサイトを表面化させるようになりました。
そして現在起きていることは,AIが実際に行動を起こすエージェンティック(自律的)な時代への移行です。
ローンチ前のゲームに「合成プレイヤー」を作り出し,マーケティングチームにフィードバックを提供させるという使い方が一般的になってきています。
実際のプレイテストやフォーカスグループなどの従来の方法に加えて,AIによる合成プレイヤーを活用するのです。
AIはセグメンテーションが非常に得意です。プレイヤーベースを見て,「ここには7〜8種類の異なるプレイヤーがいます」と分類できます。
マーケティングチームや開発チームは,とくに関心を持っているセグメントに非常に近い合成プレイヤーを生成し,実際のローンチ前にAIを使ってシミュレーションすることで,プレイヤーの行動を深く理解することができます。
これはマーケティングの重要な機能のひとつを加速させる,非常に強力な手段です。
4Gamer:
モバイルゲームのトレンドについてはどうお考えですか? AI指標を活用したトレンド作りなど,最も新しい動きがモバイルから生まれています。
Buser氏:
過去10〜20年のゲームの歴史,とくにモバイルゲームの登場以降を振り返ると,ゲーム業界におけるイノベーションの多くが,モバイルから始まっていることが分かります。
サービスとしてのライブコネクテッドゲームという概念も,モバイルから始まり,その後コンソールやPCに波及しました。
現在使われている,より高度なAI戦術についても,その多くはモバイルから始まっています。先ほど話したマーケティングの例もモバイルからスタートしました。
モバイルゲームはマーケティングに多額の費用をかけるため,多くの企業がAIの活用をマーケティングから始めたのです。
これは,ゲームプレイ中のリアルタイム推論についても同様です。
モバイルゲームの会社は,開発パイプラインとプレイヤー体験の両方において,AIの活用法を考える上で極めて先進的です。
多くのモバイルゲームは3Dではなく2Dであるため,デザインの方向転換やAIの活用をより迅速に進めることができます。
したがって,コンソールやPCにはまだ到来していないような,驚くべき量のAIのイノベーションがモバイルで起きています。
ゲームは「3D導入以来最大」の変革期を迎えている
4Gamer:
リアルタイム推論は,モバイルだけでなくコンソールやPCゲームにも移行していくとお考えですか?
Buser氏:
はい,間違いありません。
3つのカテゴリーすべてが,リアルタイム推論へと移行しつつあります。すべてのカテゴリーにおいて顧客の事例があり,今後ますます一般的になっていくでしょう。
私が約30年前,90年代後半にこの業界に入った頃,私たちは2Dグラフィックスから3Dグラフィックスへの移行を終えようとしている時期でした。業界がかつて経験したことのない最大の移行期であり,非常にエキサイティングな時代でした。
私たちは今,まさにそのような移行期の真っ只中にいます。おそらく2Dから3Dへの移行よりもさらに大きな転換期です。
2Dから3Dへの移行期に話を戻しましょう。私が大好きなゲーム,「ファイナルファンタジーVII」(以下,FF7)を例に挙げます。
FF7と「ファイナルファンタジーVI」(以下,FF6)を比較してみてください。これらは同じシリーズでありながら,技術の転換期を挟んでリリースされました。
FF6は2Dのドット絵ベースで,メディアもカートリッジでした。一方,FF7は3Dグラフィックスになり,メディアはCD-ROMでした。開発チームもまったく異なります。
これとまったく同じことが今起きています。
この移行前のゲームと移行後のゲームでは,その姿が大きく異なるものになるでしょう。
4Gamer:
グラフィックスやサウンドはほぼ同じでも,ゲームのバックエンドで非常に大きな変化が起きていると。この時代は非常に大きな転換期だということですね。
Buser氏:
間違いなく大きな変化になります。
過去5〜10年のゲームの変遷を見ると,それはただグラフィックスが良くなっていくというストーリーでした。10年前のゲームでも,今日のゲームと同じような感覚でプレイできます。「グラフィックスを良くすれば,PlayStation 5でも素晴らしいゲームになる」と思えるようなPlayStation 3のゲームはたくさんあります。
しかし今回の移行は,単なるグラフィックス以上のものです。プレイヤーの体験であり,ゲームの作られ方であり,あらゆる側面に影響を与えます。
だからこそ,今私たちが直面しているこの移行期は,すべてを変えてしまうという意味で,2Dから3Dへの移行と同等か,それ以上に大きいものだと考えています。
4Gamer:
90年代には3D技術が求められましたが,現在のゲーム開発者には,どのような技術やスキルが必要とされているのでしょうか?
Buser氏:
興味深いことに,今やテクノロジーは十分に揃っています。GCN 2026で発表となった内容を見ても,開発チームが利用できるものは山ほどあります。
テクノロジーは3Dの時のように今後も進化し続けますが,すでに基盤は整っており,だからこそAIが実用化されているのです。実際の課題はテクノロジーの成熟度ではありません。
本当の課題は,ゲームデザインやゲーム開発の観点。すなわち,よりクリエイティブな課題です。
今,手元には新しい可能性やツール,素材がすべて揃っています。それをゲームの文脈で,どう意味づけるかというのが問題なのです。これは難しい問題であり,エキサイティングな問題でもあります。
ここからの数年間でイノベーションの多くが起こるのは,まさにこのクリエイティブな課題に対する部分だと思います。
3D技術が初めて生まれたとき,皆が画面にポリゴンを表示する方法を学習しましたが,「では,どうやってゲームを作るのか?」という問いに直面したのと同じことが,今起きているのです。






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