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4月、プレイステーション5の各モデルが値上げされた。ソニーグループはこれまで何度かゲーム機の値上げを行ってきているが、これはなぜなのか。そしてそれがソニーのゲームビジネスにどのような影響をもたらすのか。さらに、これまでゲーム機の値上げをほとんど行ってこなかった任天堂は今後どうするのか。連載『沸騰!エンタメビジネス』の本稿でアナリストが解説する。(東洋リサーチアドバイスシニアアナリスト 安田秀樹)
「ゲーム機は値下げすると売れる」は本当か?
デフレ時代から一変したゲーム会社の価格戦略
今回はゲーム機の価格動向について考えていきたい。ゲーム機は、発売から一定期間が経過した後に、値下げやセールが行われるビジネスモデルだというイメージが一般では強い。これは、かつての久夛良木健・元ソニー副社長の時代からPS(プレイステーション)4に至るまで、プレイステーションが定期的、あるいは期間限定の値下げを戦略的に実施してきたからである。
1990年代から2020年ごろまでの日本はデフレ下にあり、さらにエレクトロニクス産業の技術進歩が著しかった。特に90年代後半から2000年代初めは、半年ごとに製造コストが大幅に下がるような状況が背景としてあったのだ。技術者出身の久夛良木氏は、この製造コスト低下を製品の小型化へとつなげ、結果として大きな価格引き下げを実現したのである。
値下げが行われるたびに、プレイステーションシリーズは着実に販売数量を伸ばしてきた。この一連の流れから、「値下げこそが販売増の決め手」であるかのように見えてきたのである。この確かな実績こそが、消費者の間に「ゲーム機はいずれ安くなる」という先入観(バイアス)をつくり上げたといえるだろう。
事実、PS2は頻繁なモデルチェンジと値下げを繰り返し、累計1.6億台という大ヒットを記録した。発売当初は苦戦したPS3も、モデルチェンジと値下げの結果、8000万台まで販売台数を伸ばした。PS4もまた、年末商戦期のセールなどで着実に販売を伸ばしている。これだけの実績データがあれば、20年のPS5発売時にも、PS4と同様の価格戦略が想定されていたはずである。
ところがPS5は異例ともいえる頻度で値上げを繰り返している。26年4月2日にもPS5の価格が再び改定された。これはなぜなのか。そして、この値上げはPS5の販売にどのような影響をもたらすのだろうか。またソニーのライバルである任天堂の動向は今後どうなるのだろうか。次ページから詳しく見ていこう。
