デジタル配信やライブサービス型ゲームが一般化した現在、サービス終了やプラットフォームの消滅によって、購入したゲームが遊べなくなる問題はますます大きな議論となっています。そうした中、ゲームの保存とプレイヤーの権利を訴える「Stop Killing Games」運動は、世界的に注目を集めています。
今回Game*Sparkでは、この問題に対するひとつの回答として「Eternity」システムを提唱する開発者にインタビューを実施しました。
Apocalypse Studiosで同システムを導入した『Deadhaus Sonata』を開発中のデニス・ダイアック氏は、かつて『ケイン・ザ・バンパイア』やゲームキューブの『エターナルダークネス』やゲームを手掛けた業界ベテラン。“理論上永遠に”遊べるようにするというその構想、そしてゲーム業界が見失ってしまったものについて、詳しく話を訊きました。
「Stop Killing Games」は、ゲーマーの権利を取り戻す運動
――「Stop Killing Games」運動について、どのように考えていますか?
ダイアック氏:私は「Stop Killing Games」運動を強く支持しています。ゲームクリエイターとして、私たちの仕事はゲーマーのために働くことです。そしてゲームがゲーマーに販売されたのであれば、彼らが望む限りそのゲームを遊び続けられるような仕組みが、最初から組み込まれているべきです。
彼らはそのゲームにお金を払っています。私は、それはゲーマーの権利だと考えています。

――世界各地でさまざまな動きが起きています。現在の状況をどのように見ていますか?
ダイアック氏:この運動には、大きな前向きの勢いが生まれています。なかでも最も重要なのは、この問題に対する認知が高まったことです。
私たちが最初に「Eternity」について考え始めたころには、こうした認識そのものが存在していませんでした。たとえば、多くの人はSteamでゲームを購入すると、そのゲームを自分が所有していると思っていました。しかしこれは、時限爆弾のような問題です。
Steamがいつか終わることを考えてみてください。いずれSteamは失敗し、ゲイブ・ニューウェル氏も亡くなり、何か別のものがそれに取って代わるでしょう。そのとき、ゲーマーたちが支払ってきた、何兆ドルもの価値があるゲームはどうなるのでしょうか。
Apocalypseでは、この問題に対する解決策を考えなければならないと感じました。ゲーマーのために働き、この問題を解決しようとしたのです。
パブリッシャーが、サポート終了後に自社のゲームを遊ぶ可能性を一切なくしてしまうというひどい慣行は、結果としてこの問題により大きな注目を集めることにもなりました。それは、たしかに不幸中の幸いだと言えます。
ゲームを“理論上永遠に”遊べるようにする「Eternity」
――あらためて、「Eternity」システムについて説明していただけますか?
ダイアック氏:Eternityは、ゲームを理論上永遠に遊べるようにする技術です。開発者によるアクティブなサービス期間を超えて、クリエイターの寿命を超えて、さらには将来存在するかもしれないどのプラットフォームの寿命をも超えて、ゲームを遊び続けられるようにするものです。
先ほど述べたSteamの問題を解決するためのものでもあり、「Stop Killing Games」の問題に対する解決策でもあります。その目的は、ゲーマーに力を与え、彼らが望む限りゲームを遊べるようにすることです。たとえば、何百年も前に彼らの高祖父が遊んでいたゲームであっても、遊べるようにすることを目指しています。
さらにEternityは、単にゲームメカニクスを残すだけではありません。歴史や記憶を保存し、ゲームが帰ってこられる場所を与えるものでもあります。Eternityは、所有とガバナンスの基盤を提供します。それによってゲーマーは、ゲームそのもの、そのIPの所有権、さらには収益や創造的な方向性まで、完全にコントロールできるようになります。
ゲーム世界の未来をコントロールするのに、そのゲームをプレイし、愛しているゲーマー以上にふさわしい存在がいるでしょうか。私たちはこのEternityを『Deadhaus Sonata』に組み込んでいます。
――サービスが最終的に終了したとき、ゲームのコンテンツはどのように保存されるのでしょうか?
ダイアック氏:ゲームコンテンツは、分散型サーバーネットワークを通じてゲーマーに提供されます。これにより、単一障害点を避けることができます。また、ゲーマーが完全にゲームをコントロールできるようにするため、ソースコードやその他のリソースも提供されます。
――ユーザー生成コンテンツや、プレイヤーによる二次利用も想定していますか?
ダイアック氏:はい。それは最初から組み込まれており、ユーザー生成コンテンツがゲーム開発において重要な役割を果たすことを前提としています。
――Eternityシステムにおける「永続性」とは、技術的な保証を指すのでしょうか。それともコミュニティによって継続されることを意味するのでしょうか?
ダイアック氏:その両方です。
ひとつは、ゲーマーが望めばゲームを継続できるという技術的な保証です。もうひとつは、彼らがその世界をコントロールし、そこにコンテンツを作り、オリジナルのクリエイターたちには想像もできなかった方向へゲームを導いていけることです。
私は年を重ねるにつれて、この世界に来たときよりも多くのものを残して去りたいと思うようになりました。Eternityをゲーマーに贈ることが私の目標です。これは別れの贈り物であり、彼らが永遠に持てるものです。望むなら、それを自分の子どもたちに渡すこともできるものなのです。
プレイヤーがIPや収益、創造的方向性まで引き継ぐということ
――Eternityは、プレイヤーにゲームそのもの、IP、さらには収益までコントロールさせるものだと説明されています。プレイヤーの視点から見ると、それは実際にはどのような形になるのでしょうか?
ダイアック氏:それは公開企業に近いものです。ゲームそのものが、それをプレイする人々によって統治されるのです。創造的な方向性、技術基盤、そして収益までもが、プレイヤーによってガバナンスされます。
――Steamのようなプラットフォームを超えてゲームが遊び続けられるべきだと話していました。もしSteamのようなサービスが消滅した場合、プレイヤーは実際に何をすれば遊び続けられるのでしょうか?
ダイアック氏:Eternityがあれば、プレイヤーに必要なのはインターネット接続だけです。私たちは、現在のプラットフォームが一切存在しないことを前提にEternityを構築しています。唯一の条件は、人々がそのゲームを遊びたいと思っていることです。

――公式サービスが終了した後、その体験は現在プレイヤーが知っているゲームと同じものになるのでしょうか。それとも、根本的に異なるものになっていくのでしょうか?
ダイアック氏:それは未知の領域です。私には答えがありません。
ただ言えるのは、私が死んでしまい、もはや貢献できなくなった後にどうなるかはわからないということです。それでも、そのゲームを導く存在として、そのゲームをプレイし愛している人々以上にふさわしい者は思いつきません。
――安定した、開発者によって維持される体験を好むプレイヤーもいます。Eternityは、異なるバージョン間での分断や不整合をどのように避けるのでしょうか?
ダイアック氏:これはソース管理の問題です。そして、こうした問題に対する優れた解決策は、この10年ほどですでに存在しています。
最終的には、それはコミュニティが持つものになります。そして、どれだけのバージョンのゲームを流通させたいのかを、彼ら自身が決めていく必要があります。
――プレイヤーに力を与えることを強調されていますが、実際に多くのプレイヤーはそこまでのコントロールを望んでいると思いますか? それともEternityは、より小規模で熱心な層に向けたものなのでしょうか?
ダイアック氏:彼らがコントロールを引き受ける必要はありません。それは完全に任意です。
実際にゲームをコントロールしたいと思う人は、おそらく少数でしょう。なぜなら、それは非常に大変な仕事だからです。創造的なことをしたい人もいれば、財務面を担当したい人もいるでしょう。
私たちは、ゲーマーがそうしたことをすべて行えるツールを提供します。そして少なくとも、望むならそうできる機会をプレイヤーに与えるのです。
――プレイヤーがコンテンツや方向性を引き継いだ場合、ゲームのアイデンティティはどのように維持されると考えていますか?
ダイアック氏:H.P.ラヴクラフト協会や、SCP――Secure, Contain, and Protectの世界を管理しているコミュニティグループを見ればよいでしょう。これらの世界のアイデンティティは、コミュニティによって非常によく維持され、焦点も保たれています。
『エターナルダークネス』のサニティシステムにも通じる、怒りから生まれた発想
――そもそもEternityというアイデアに至ったきっかけは何だったのでしょうか。特定の瞬間や経験が、この方向へ進ませたのでしょうか?
ダイアック氏:それは『エターナルダークネス』の「サニティシステム」を生み出したものに近い感覚だったと思います。『エターナルダークネス』に取り組んでいたころ、多くの政治家たちが「ビデオゲームは人々を暴力的にする」と主張していました。それは、ゲーム業界全体を脅かすほど大きな政治的運動でした。
私はIGDA(国際ゲーム開発者協会)のグループに参加しており、そこにはこのテーマに関する研究を検証していた学者たちもいました。そして、その考えには科学的根拠がないことは非常に明白でした。
後になって、そうした政治家たちはそのことを知っていながら、気にせずにビデオゲームに対する運動を続けていたのだと知りました。それに私は本当に腹を立てました。もし彼らが、私たちが人々の頭をおかしくしていると非難するなら、私は実際に人の頭をおかしくしようとするゲームを作ってやろうと思ったのです。そうして「サニティシステム」は生まれました。
ダイアック氏が手掛けた『エターナルダークネス』PV
Eternityについても、それと似たような怒りが、時間をかけてゆっくりと積み上がっていったのです。ゲーマーが不当に扱われており、その多くが自分たちに実際に何が起きているのか理解していないと感じました。そして私は、何かをしなければならないと思いました。
デジタル配信の登場によって、人々はSteamやソニー、マイクロソフト、任天堂のプラットフォームでゲームを「買う」ようになりました。デジタルストアには「Buy」ボタンがあります。この新しい便利な技術は素晴らしいものでした。ゲームを手に入れるために家を出る必要がなくなったからです。
しかし問題は、ゲーマーたちが、スイッチひとつで自分のゲームが消えてしまう可能性を本当には理解していなかったことです。実際には、ゲーマーが得ているのはゲームを遊ぶためのライセンスにすぎません。つまり、プラットフォームのサービスが利用可能である限りという、一時的な期間だけのものです。
そして、いずれこれらすべてのプラットフォームは失敗します。それは確実です。これはゲーマーにとっての問題であり、ゲーム業界にとっての倫理的な問題でもあります。
私は何かをしたいと思いました。最初は『Deadhaus』の中で、その思いを書きました。
「私たちは、誰もが嘘をつく時代にいる。
欺瞞の層がいくつも積み重なり、意識を押しつぶしていく。あまりにも多くの虚偽が存在するため、普通の人間はその欺瞞の認知的な重さに耐えられなくなり、やがて絶望と専制に屈してしまう。真実が失われた以上、希望はない。
私について来い。真実を武器にしよう。
私たちは嘘を切り裂き、彼らに道を示す。」
しかし、それだけでは不十分だと感じました。そこで私たちは、この問題に取り組むための技術を考え、開発し始めました。ゲーマーがデジタルでゲームを本当に購入できるようにするためです。
その技術を開発していく中で、私たちはそれがさらに多くの可能性を持っていることに気づきました。理論上は永遠に存在し、ゲームが世代を超えて残り、ゲームコミュニティに何かを返すことができる可能性があるのです。
「私のゲームは私の子どもたち」――キャリアを経てたどり着いた人生の目標
――長いキャリアを振り返ったとき、どのような考え方の変化がこのアイデアにつながったのでしょうか?
ダイアック氏:私はこれまで多くのヒット作を作ってきました。そして、素晴らしい経験をたくさんする機会にも恵まれました。
宮本茂さんや小島秀夫さんのような偉大なクリエイターと仕事をすることもできました。岩田聡さんは大切な友人で、今でもとても恋しく思っています。任天堂を退任された後の山内溥さんにもお会いしましたし、Nintendo of Americaでは荒川實さんとも近い距離で仕事をしました。
ダイアック氏が共同プロデューサーを手掛けた『メタルギアソリッド ザ・ツインスネークス』
こうした経験は、多くのゲームクリエイターにとって夢見ることしかできないものです。同時に、私は多くの過ちも犯してきました。だからこそ、私はこの世界から奪ったものよりも多くのものを返して去りたいと思っています。そのための最も大きな可能性は、ビデオゲーム業界の中にあります。
私は、これまで多くの機会を与えてくれたゲーマーに何かを返そうとせずにはいられないのです。私には子どもがいません。そして、私のゲームこそが私の子どもたちです。だからEternityは、私の人生の目標であり、運動であり、私自身の延長だと言えるかもしれません。
――Eternityは、ゲーム業界の現状への回答だと考えていますか?
ダイアック氏:はい。概して、ゲーム業界は「自分たちはゲーマーのために働いている」という指針を見失い、代わりに収益を増やすことに集中するようになってしまいました。
ゲーマーがいなければ、ビデオゲーム業界は存在しません。多くの大手プレイヤーが行っている慣行に対して、ゲーマーたちは非常に不満を持ち、怒っています。それは「Stop Killing Games」運動からも見て取ることができます。
ゲームが忘れられるリスクと、業界標準への可能性
――Eternityは、ゲームが消えてしまう問題を解決しようとしています。このアプローチにおける最大のリスクや限界は何だと考えていますか?
ダイアック氏:このアプローチが成功する上で最大のリスクは、人々がそのゲームを遠い未来まで遊び続けたいと思うかどうかです。
Eternityが使われていれば、どのようなプラットフォームが利用可能であろうと、あるいはプラットフォームが存在しなかろうと、ゲーマーにはゲームを続ける機会があります。
しかし、もし彼らがそのゲームを遊びたいと思わなければ、そのゲームは休眠状態に入り、おそらく忘れられてしまうでしょう。
――Eternityは業界の標準モデルになり得ると思いますか? それとも、ゲームの資金調達や所有のあり方に根本的な変化が必要になるのでしょうか?
ダイアック氏:はい、業界標準のモデルになる可能性は確かにあります。
ただし、このモデルへの抵抗は、ゲームと所有に対する考え方を根本的に変える必要がある点にあります。
業界は原点に戻り、クリエイターとして私たちはゲーマーのために働いているのだと理解しなければなりません。そしてこれは、ゲーマーからの信頼を取り戻すための最良の方法のひとつなのです。

――ありがとうございました。
『Deadhaus Sonata』は、PC(Steam)向けに2026年中に早期アクセスで配信予定です。
