2025年9月9日、Mogura VRを運営する株式会社Moguraは、オンラインイベント「【無料セミナー】毎日1億人がアクセスする最新プラットフォーム、Robloxの最新動向をお届け!RDC報告会 supported by GeekOut」を開催した。本稿ではその模様をレポートする。
イベントでは、米国サンノゼで毎年開催されるRoblox開発者向けカンファレンス「Roblox Developer Conference(RDC)」の最新情報が、現地参加者によって共有された 。
登壇者プロフィール
2022年よりRobloxの日本展開をサポートし、さまざまな企業・IPの進出をプロデュースしてきた、国内におけるRoblox関連ビジネスの第一人者。国産コンテンツとクリエイターコミュニティが共創し、日本の全ての人や企業がRobloxを新たなメディアとして活用する未来に向けて活動中。
久保田 瞬(株式会社Mogura 代表取締役社長/Mogura VR編集長)
国内外のXR・メタバースイベントを多数取材し、産業・エンタメ・教育分野の活用事例に精通。Robloxを含むUGCメタバースの動向分析を行うジャーナリスト。
1億人超が遊ぶRobloxの今
RDCは、世界中のRoblox開発者・クリエイターが一堂に会する招待制のイベントである。久保田は現地の雰囲気について、かつての巨大テック企業の開発者会議が持っていた熱気に近いものを帯びていたと語る。
一方、RDCに2回目の参加となる田中氏は、「1年ぶりに会うクリエイターとか、すれ違って話が盛り上がったり、同窓会みたいな感じで過ごしてました」 と振り返る。プラットフォームが急成長を遂げる中でも、クリエイターコミュニティを大切にする文化が根付いている様子がうかがえる 。
DAU1.1億人、驚異的なプラットフォームの成長
イベント冒頭、サプライズゲストとしてRoblox Japanのマーケティング本部長、梅林桜子氏が登場。プラットフォームの現状が語られた。デイリーアクティブユーザー(DAU)は1億1,180万人に達し 、アクティブなゲーム・バーチャル空間の数は640万タイトルを超えるという 。梅林氏は「日本の人口、約日本の人口が毎日アクセスしている中で、皆さんがいいつながり方ができるように機能を日々改善しております」 と述べ、プラットフォームの規模感とその社会的責任の大きさを強調した。この成長を支えるクリエイターエコノミーも驚異的だ。トップ10開発者の年間平均収益は3,850万ドル(約56億円)、トップ100でも700万ドル(約10億円)に達する。
梅林氏は、今年のRDCにおける特に重要な発表として5つのハイライトを挙げた。
安全性機能の強化
Roblox モーメント
4Dオブジェクト
DevExレートを8.5%引き上げ
マテル社と講談社のライセンスカタログ参画
これらの発表は、ユーザー保護からクリエイターの収益性向上、そして新たなコンテンツ創造の可能性まで、Robloxが目指す未来を多角的に示すものであった。それぞれの内容について、久保田と田中氏は自らの知見を交えながら深掘りしていく。
体験を革新する新機能
全年齢が安心できる、安全性機能の強化
Robloxは「安全性とマナーを基盤とした環境で人々の繋がりの在り方を変革する」 ことをビジョンに掲げている。今回、その実現に向けた2つの大きな機能強化が発表された。一つは、動画による顔認証や本人確認書類を用いた年齢確認の強化である。これにより、成人ユーザーと未成年ユーザーのコミュニケーションをより安全に管理できるようになる。もう一つは、国際年齢評価連合(IARC)との提携による、ゲームコンテンツの新たな年齢基準の導入だ。久保田は「Robloxは、ずっと安全性が最優先事項であると言っていますよね」 と述べた。
ゲーム発見を促す新機能「モーメント」とは
「Robloxモーメント」は、ユーザーがゲーム内の名シーンを動画として切り抜き、プラットフォーム上で共有できる新機能だ。これまではTikTokやYouTubeといった外部プラットフォームがゲーム発見の場となっていたが、Roblox内で完結し、面白そうな動画から直接そのゲームに飛び込めるようになる。田中氏は「開発者たちにとってはすごく新しいゲーム集客の手段になる」 とその可能性に期待を寄せる。さらに、この機能がAPIとして提供される点も重要だ 。久保田は、「ゲームの中でチェックポイントに到達したらモーメントを保存するみたいなプロンプトを出すこともできますよね」 といったアイデアも紹介した。
NPCが喋りだすText to Speech機能
AI関連の発表の中で、田中氏が「結構ターニングポイントになる」 と特に注目したのが、Text to Speech機能だ。これにより、クリエイターは声優を雇うことなく、テキストを入力するだけでゲーム内のNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に自然な音声を付与できるようになる。これまでボイスが実装されているRobloxのゲームは稀であったが、この機能によって没入感の高い体験が数多く生まれることが期待される。
AIが変えるコンテンツ制作
プロンプトで”動く”「4Dオブジェクト」が登場
今回のRDCで最も未来を感じさせた発表が、「4Dオブジェクト」の公開だろう。これは、AIを用いてプロンプト(テキスト指示)から3Dオブジェクトを生成するだけでなく、そのオブジェクトが持つべき「機能」までを自動で付与するという画期的なものだ。
例えば「ドラゴンの形の車を作って」と入力すれば、ただのドラゴンのモデルではなく「車として走れる」機能を持ったオブジェクトが生成される。田中氏は「これがゲームの中でもプレイヤーが使えるっていうのがすごいですよね」 と語る。クリエイターの開発効率を上げるだけでなく、プレイヤー自身がゲーム内で想像力を爆発させ、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の中でさらにUGCを生み出すという可能性もあるのだ。
外部ツール連携とAIによるUI自動生成
開発環境の効率化も大きく進む。特に注目を集めたのが、デザインツールFigmaで作成したUIを、AIを介してRoblox Studioに自動で取り込むデモンストレーションだ。久保田は「あまりにもさらっとしていた」 と話し、これまで多くのクリエイターを悩ませてきたUI開発のハードルが劇的に下がることを示唆した。このほか、VS Codeとの連携も正式にサポートされ 、より多くの開発者が慣れ親しんだ環境で制作に取り組めるようになる。
Robloxは、AIをあくまでクリエイターの創造性を拡張するためのツールとして位置づけている。久保田はRoblox役員へのインタビュー内容として、「あくまでも今困ってる部分を解説するために入れてる」 と語り、AIによってゲームデザインのコントロールが失われるのではなく、クリエイターが面倒な作業から解放され、より本質的な創造に集中できるようになるという考え方を明らかにした。
開発環境の重要アップデート
クリエイター待望のDevExレート8.5%引き上げ
RDCで最も大きな歓声が上がった瞬間は、「DevExレートを8.5%引き上げ」の発表だった 。DevEx(Developer Exchange)は、クリエイターがゲーム内で得た仮想通貨Robuxを現実の通貨に換金する仕組みであり、その換算レートが引き上げられることは、全クリエイターの収益が自動的に増加することを意味する。田中氏は「ご褒美ですよね。本当に」 と語り、プラットフォームがクリエイターへの還元を最重要視している姿勢の表れであると評価した。
フォトリアルな表現と軽量化を両立する技術
近年、Robloxはグラフィック表現の向上にも力を入れている。しかし、それは同時に低スペックなスマートフォンなどでのパフォーマンス低下という課題も生む 。このジレンマを解決するのが、新技術「スリム(SLIM)」である。これは、クリエイターが作成した高品質なアセットを、クラウド側でユーザーのデバイス環境に応じて自動的に最適化・軽量化する仕組みだ 。これにより、クリエイターはデバイスごとの最適化を気にすることなく、フォトリアルで広大な世界の構築に専念できるようになる。
メイクも可能に、アバター表現が大幅リッチ化
アバターの表現力も飛躍的に向上する。4Kテクスチャへの対応や、物理演算に基づいたリアルなモーション に加え、新たにメイクアップ機能が導入されることが発表された。これまでは顔のテクスチャを丸ごと変更する必要があったが 、今後は服装を着替えるように、メイクだけを自由にカスタマイズできるようになる。田中氏は「自由度がシンプルに高まる」 と述べ、ユーザーの自己表現の幅が大きく広がることに期待を示した。
日本からも熱視線、ビジネスの未来
講談社も参画したライセンスカタログの衝撃
ビジネス面での最大のトピックは、「ライセンスカタログ」への講談社とマテル社の参画だ。これは、IPホルダーが提供するキャラクターや世界観を、Robloxクリエイターが公式に利用してゲームを開発できる仕組みである。特に、講談社が『ブルーロック』や『転生したらスライムだった件』といった人気IPを提供したことは大きな衝撃を与えた。田中氏は、「発表して30分後ぐらいから、すぐにたくさんの応募が来た」と、世界中のクリエイターからの反響の大きさを語る。
リアルと繋がるデジタルファッションの可能性
RDC会場では、東京の文化服装学院の学生が制作した、Robloxのアバターアイテムとリアルのドレスが展示され、CEOのデイブ・バズッキ氏も足を止めて見入っていたという。久保田は、リアルの服飾デザイナーがバーチャルアイテムを手がける一方、Roblox内のファッションデザイナーがリアルブランドとのコラボを始めるなど、「バーチャルからリアル」と「リアルからバーチャル」の双方向の流れが生まれていると指摘 。田中氏も「アバターのファッションにリアルで影響を受ける割合が高い」 と語った。
日本市場の現状と今後のポテンシャル
イベントの終盤、日本におけるRobloxの広がりについても議論が交わされた。田中氏は、「どこ行っても『Roblox最近来てるね』みたいに言われることが増えている」 と肌感覚を語り、プレイヤーだけでなくクリエイターや関心を持つ企業も目に見えて増えている現状語る。今回のRDCで発表された数々のアップデートは、Robloxが単なるゲームプラットフォームではなく、誰もが創造し、表現し、繋がることができる次世代のコミュニケーション基盤へと進化を続けていることを示した。日本においても、その存在感が今後ますます高まっていくことだろう。













