――物語主導のスタジオが新境地へ。『Star Wars: Eclipse』の行方にも注目

『Heavy Rain』『Detroit: Become Human』など、シネマティックなストーリーテリングで知られるフランスのゲームスタジオ「Quantic Dream(クアンティック・ドリーム)」が、初のマルチプレイヤー作品となる新作『Spellcasters Chronicles』を正式発表した。
同作は3対3で戦うチームベースのアリーナ型アクションで、基本プレイ無料(F2P)タイトルとして2025年末にPC(Steam)向けクローズドベータを予定している。

■ 物語の名手が挑む「競技型マルチプレイ」

これまで一貫してシングルプレイヤーの物語体験を重視してきたQuantic Dreamにとって、『Spellcasters Chronicles』は大きな方向転換となる。
本作ではプレイヤーが“スペルキャスター”と呼ばれる魔導士となり、アリーナ内で3対3のチームバトルを繰り広げる。
キャラクターは「サポート」「タンク」「アタッカー」といったロールに分かれ、戦略的な役割分担が求められる。

特徴的なのは、50種類以上の魔法や召喚術を組み合わせて戦うデッキ構築システム。
バトル中には強力な召喚獣「タイタン」を呼び出すこともでき、スキル構成や連携によって戦況が大きく変化するという。
ゲームのアートスタイルはファンタジーとSFを融合した独自の世界観で描かれ、ティザートレーラーでは派手な魔法エフェクトとアリーナ戦の様子が公開された。

Spellcasters Chronicles■ デヴィッド・ケイジ氏「リスクを恐れず、新しい挑戦を」

スタジオ創設者であり代表のデヴィッド・ケイジ(David Cage)氏は、公式ブログで次のように語っている。

「『Spellcasters Chronicles』は、これまでとはまったく異なる作品です。
しかし、リスクを恐れず、新しい遊び方や物語の伝え方を探求することは、私たちのDNAに深く根付いています。
プレイヤーの皆さんと共に、この挑戦を磨き上げていくことを楽しみにしています。」

デヴィッド・ケイジ

さらにゲームディレクターのグレゴリー・ディアコヌ(Gregorie Diaconu)氏も次のようにコメントしている。

「本作は、私たちの“ストーリーテリングへの情熱”を“共有できる世界”へと拡張するための実験として始まりました。
これまでの作品とは異なる形ではありますが、プレイヤーが物語を形作るという私たちの理念は変わりません。
今回はそれを、個人ではなく“集団”で体験してもらうのです。」

グレゴリー・ディアコヌ

これまでプレイヤー一人の選択に焦点を当ててきたQuantic Dreamが、“他者と共に物語を創る”方向へ進化しようとしているのだ。

■ ゲームプレイの印象は“王道ヒーローシューター”?

ただし、公開されたティザートレーラーを見た限りでは、ゲームプレイの印象はやや既視感のあるものだった。
ジャンルとしては『Overwatch』や『Paladins』に近い“ヒーローシューター”形式で、キャラクターごとの能力や連携プレイが重要になるタイプの作品だ。
現時点ではビジュアル面・操作感ともに大きな独自性は確認できず、どのように“Quantic Dreamらしさ”を打ち出していくかが鍵となりそうだ。

一方で、同スタジオ特有の演出力や物語的背景をチーム対戦の中にどう組み込むのか――その点には大きな注目が集まっている。
『Detroit: Become Human』で見せた“キャラクター同士の選択の積み重ね”をオンラインに持ち込む可能性もあり、正式版での進化が期待される。

Spellcasters Chronicles■ クアンティック・ドリームを取り巻く波乱の数年

Quantic Dreamはここ数年、スタジオとしての体制にも大きな変化があった。
フランスの複数メディアが報じた「職場での差別的発言」や「過酷な労働環境」に関する内部告発をめぐり、創設者のケイジ氏と共同代表ギヨーム・ド・フォンダミエール氏が名誉毀損で訴訟を起こした事件は記憶に新しい。
2021年の裁判ではケイジ氏が涙ながらに退廷する場面も報じられ、結果として裁判は“一部勝訴・一部敗訴”という複雑な結末を迎えた。
一連の報道内容の多くは、裁判所により事実として認定されたままとなっている。

この混乱期を経て、スタジオはパリとモントリオールの2拠点体制に拡大。
これまでの「物語特化スタジオ」から、「創造性と技術力を両立する総合開発チーム」へと変革を進めている。

■ 『Star Wars: Eclipse』はどうなった?

ファンが最も気にしているのは、やはり2021年に発表された『Star Wars: Eclipse』の動向だ。
当初「まったく新しいスター・ウォーズ体験」として注目を集めたが、その後はほとんど情報がなく、開発中止の噂も囁かれていた。
ケイジ氏は今回のブログで短くこう述べている。

「もちろん、『Star Wars: Eclipse』の開発も続いています。
近い将来、皆さんに新しい情報をお伝えできることを楽しみにしています。」

デヴィッド・ケイジ

それ以上の詳細は一切明かされておらず、正式発表から4年経っても続報がない点からも、開発は依然として時間を要しているようだ。
同スタジオが最後にリリースしたタイトルは2018年の『Detroit: Become Human』であり、以降は自社開発よりもパブリッシャーとして『Dustborn』『Under the Waves』など外部スタジオ作品の支援に注力していた。

■ TwitchConで初の実機展示へ

『Spellcasters Chronicles』は2025年末にPC向けクローズドベータを実施予定。
また、今週末開催のTwitchConでは初のプレイアブル展示が行われ、その模様はTwitch公式「LANチャンネル」でライブ配信される。
現地では開発陣によるトークセッションも予定されており、ゲームの全貌が明らかになる可能性が高い。

Spellcasters Chronicles■ 新しいQuantic Dreamの“物語”が始まる

『Spellcasters Chronicles』は、単なる“ジャンル転換”ではなく、Quantic Dreamというスタジオそのものの再出発を象徴する作品だ。
これまで“個人の選択”にフォーカスしてきた同社が、今度は“仲間と共に物語を紡ぐ”方向へ進化する――。
それがどのような形で実現されるのか、そして“物語の名手”がどのようにマルチプレイという舞台を演出するのか。

次の一手に、世界中の注目が集まっている。

✅ タイトル:Spellcasters Chronicles
✅ ジャンル:3v3チーム対戦型アクション(F2P)
✅ 対応プラットフォーム:PC(Steam)
✅ 開発元/発売元:Quantic Dream(フランス・パリ/モントリオール)
✅ クローズドベータ:2025年末予定
✅ 初公開イベント:TwitchCon(2025年10月)

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