弊社アクティブゲーミングメディアのPLAYISMは3月4日、『炎姫』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)。『炎姫』は台湾の少人数チームが開発した3Dアクションゲームだ。
『炎姫』の舞台は、人間と妖が共存している世界だ。死の間際に強い感情や未練を残した霊魂は妖魔へと変化し、妖魔は世界の理を侵す妖力を有し、妖力に穢された生き物は下等な妖怪に変化するという。主人公の炎姫(CV:楠木ともり)と補佐官の安(CV:石見舞菜香)は、強大な妖魔が出現したことで、大神官により妖浄化の任務に派遣されることとなった。
ゲームシステムとしては、敵の攻撃を回避やパリィで対応しながら華麗なコンボを決めていく、爽快感と緊迫感が同時に味わえるアクションが特徴。軽攻撃と重攻撃による斬撃があり、コンボや斬り上げなどのアクションも可能。
上のトレイラーを見てもわかるとおり、本作では弾幕が登場。そうした要素も含めて、本作は『ニーア』シリーズから強く影響を受けている。学生作品から始まり、少人数チームで6年かけて開発し、いよいよ完成にたどり着いた。本作が『ニーア』シリーズを強くリスペクトしていることから、せっかくなので編集部は『ニーア』チームに意見を聞かせてもらえないかと画策。
『炎姫』チームCrimson Duskからインタビューできないか尋ねたところ、スクウェア・エニックスおよび『ニーア オートマタ』開発コアメンバーのヨコオタロウ氏と田浦貴久氏に承諾いただけた。ということで、『炎姫』チームCrimson Duskが『ニーア オートマタ』開発メンバーにアドバイスを求めるという、不思議なインタビューをお届けする。
ヨコオ氏・田浦氏の率直感想
――本日はお時間いただき、誠にありがとうございます。すでに、『炎姫』をお二方に遊んでいただいたということですが、どのような第一印象をいだかれましたか。
田浦氏:
ぱっと見て、まずは可愛らしいキャラクターが目に入りました。僕は、このようなアニメタッチのキャラクターがすごく好きなので、それを操作してアクションできるということに好印象をいだきました。そして実際にゲームを触ってみると、意外とシビアな操作を求められたり、ボスもしっかり戦わないと勝てなかったりと、骨太のアクションを作っていらっしゃるとわかり、そのギャップにちょっと驚きました。少し難しい印象でした。
ボス戦では何回も死んでしまったりもしましたが、ちゃんと相手の動きを把握して対処していけば、最終的には倒すこともできましたし、バランスをよく考えて作ろうとしているのだなと感じました。率直に、面白かったですよ。

開発チームCrimson Dusk:
お褒めいただいてありがとうございます!!確かに少し難易度は高めに設定しています。これは私たちのこだわりとして、このようになっています。
PLAYISMプロデューサー:
いわゆる死にゲーではないですが、アニメ調のゲームのアクションゲームとしては難しく感じるのはちょこちょこいただいている意見です。参考になります。
――『炎姫』を遊んでいただいて、ありがたいです。ヨコオさんの第一印象はいかがでしたか。
ヨコオ氏:
まずは、『ニーア オートマタ(以下、オートマタ)』をリスペクトしていただいているということが、ものすごくありがたいと思っています。それと同時に、『オートマタ』が売れたのは偶然によるところが大きいので、そこから……はたしてどんな学びがあるかという疑問は……あります。

――学びというのは。
ヨコオ氏:
『炎姫』はおそらく少人数体制で作られていると思うんです。一方、『オートマタ』は大きな会社で、それなりの人数をかけて作ったものなんですね。そうすると、『オートマタ』と『炎姫』では、そもそものかけられるコストが違ってくると思います。
そんな中、『炎姫』に「良いな」と思ったところは、とにかく色々なものがてんこ盛りに入っていることです。可愛いアニメキャラが出てくるし、弾幕もあるし、アクションにも地形アクションまで入っているという。僕らは、仕事で作っているのでコストに対してどういうものを作るかということをシビアに考えます。少ない人数で予算も少なければ、できるだけシュリンクして、たとえば『Vampire Survivors』のようなコンパクトなゲームを目指しますよね。
――「好き」がいっぱい入っていると。
ヨコオ氏:
今、インディーゲームでは特にそういうコンパクトに作る方向性がメインになりつつある時代の中にあります。そんな中でも『オートマタ』のようなコンシューマー向けのデカいチームと同じようなものを、小さいチームで作ろうという気概がすごく伝わってきて、すごく良いなと思いました。インディー市場や若い人たちに、そういう何か無茶なことをやってほしいと思っているので。あまり小さく、賢く、まとまってほしくないなと思っていたところに、本作が出てきてきたところがすごく嬉しかったです。
そういった無茶をしている分、細かい部分で「もっとこうだったらいいのにな」というところもいろいろ見受けられるんですが……(笑)一番率直な感想は、この手の3Dアクションゲームというのはやはり大手のゲームと比較されてしまうだろうということです。すごく頑張っていて、良いところがたくさんあるのに、大手と比較されるフィールドに今立ってしまっているということがもったいないな、という印象です。
開発チームCrimson Dusk:
……ヨコオさんのおっしゃるとおりです。実際に作品を発表してから、ネット上では「低コストな『ニーア オートマタ』」という言われ方をしました。開発をしていく中で、やはり他のアクションゲームとの違いを入れたいという考えもあり、パリィ要素や弾幕要素を足して、近いジャンルのゲームとうまく区別していこうという結論に至りました。

ヨコオ氏・田浦氏のガチフィードバック
ヨコオ氏:
基本的な操作感、いわゆるゲームの骨格の部分はすごくちゃんとしているので、パリィなども気持ちよく遊べてアクション部分の手触りも良いと思っています。もっと周りの細かいところで、「僕らだったらこうするな」というポイントがちょこちょこ見受けられる感じがしました。
特に調整したほうがいいと思うところは……一頭身だけのキャラクターで頭探しをする部分の難易度が少し難しすぎるので、わかりやすくするか、強制でないルートにするか、どちらかにした方がいい気がしました。
――たしかに、ご指摘点、かなり納得できます。
開発チームCrimson Dusk:
ご意見いただき大変ありがとうございます。発売前になんとか調整したいと思います。
一同:
(笑)
※ 後述するが指摘フィードバックは、急ピッチで製品版へ反映された
田浦氏:
時間や操作がシビアでギリギリですよね。
ヨコオ氏:
僕の感想としては、フックジャンプと空中ダッシュフックジャンプみたいなアクションが混在していて、それがぱっと見てすぐに判断できなかったので、覚えないといけないのが大変かなと。
ほかにも最初のチュートリアルのところで、谷間を渡って行くところがあるんですけれども、最初から空中ダッシュジャンプが必要で。普通は、まずジャンプをさせてみて、次にダッシュジャンプを使ってねという作りにすると思うんです。開発者は、ゲームの操作にすごく慣れている人間なので対応できますが、そうでないお客さま目線で見るとおそらく難しすぎると思うんですね。操作内容それ自体の難しさというより、課題の提示順などの問題に感じました。
――アドバイスがめちゃくちゃガチだ……!
ヨコオ氏:
田浦さんはそのあたりどうですか?
田浦氏:
そのあたりを自分好みにするとすれば、フックジャンプのフックの射程距離が短すぎて目測ミスで失敗して落ちていくということがよくあったので、もう少し長くしたり調整します。または2段ジャンプをできるようにするか、ジャンプ自体の滞空時間をゆるく長くするなど、形そのものを変えず操作感の方を調整することで、プレイヤーのプレイフィールを良い感じにする方向で行けたら良いのかな……と思いました。
……とはいえ、僕らは人類代表として喋っているわけではなく、あくまでいちプレイヤーとしての感想ですから、やはり開発チームでしっかり揉んでもらった方がいいと思います(笑)
開発チームCrimson Dusk:
いただいたご意見をちゃんと吸収しつつ、どう調整していくかチーム内で判断します。ただ、意見いただけるのが大変ありがたいです。ありがとうございます。
ヨコオ氏:
あとは、プロモーションのレイヤーで言うと、お客さまにとっては3Dアクションゲームということでやはり大企業のゲームと並べて比較されてしまう。そこをうまく避けることが最近は特に大事かなと。たとえば、“少人数のチームで、情熱だけで作っている”ということを気にかけてもらうというスタートとか。そういうプロモーションからのアプローチも考えた方がよさそうです。
PLAYISMプロデューサー:
……勉強になります。
一同:
(笑)
『ニーア オートマタ』インスパイアと言われてどうなのか
――『ニーア オートマタ』の作り手としては、ゲームクリエイターから「『ニーア オートマタ』から影響を受けている」と言われるのはアリなのでしょうか。……こんな場に出ていただいて、かなりいまさらな質問ではありますが。

ヨコオ氏:
個人的には、『ニーア オートマタ』に影響を受けていると言ってくださるのは嬉しいことです。権利を意識してか、それを言えない方が結構いらっしゃるようで。僕が見てもすごく似てるなと思ったり、「『オートマタ』のアクションそのままじゃん!」と言われるものがあるんですけれども、作者の方は別に言わないんですよね。「コピーした」みたいなことを言われちゃうのが怖いのかちょっとわからないんですけど。
僕自身は、リスペクトとかオマージュとかそういう意味合いだと思っているので、「影響を受けた」とか、なんなら「パクった」とか、言ってもらった方が嬉しい。スクエニさんはどう思うか知らないですけど(笑)
――ほっとしました。
田浦氏:
(笑)ヨコオさんもそうだと思うのですが、僕自身もかつてプレイして良いなと思ったゲームなり作品なりの影響を受けて作っているので。「影響を受けた」と言ってもらえるのは、その“波”の中に入れたというか。個人的には「作って良かったな」と思えます。「ちゃんと次の人達に繋がるものを作れたんだな」と思えて、すごく嬉しいです。
あと、すごく良いなと思ったのは、さきほどあったパリィ要素とかもそうですけれども、ただ影響を受けて同じようなものを作るんじゃなくて、ちゃんと自分たちのやりたいことに昇華させているところが良いですね。ボスを倒すときにスティックを弾いてトドメを刺すようなシーンだったり。『オートマタ』で僕ができなかったことをやられていた箇所が一個だけあって、そこはすごく羨ましくて。射撃でゲージを消費して、ゼロになったら撃てなくなるという。あれは僕もやりたかったんです。
ヨコオ氏:
射撃でゲージを消費して、ゼロになったら撃てなくなる仕様、僕が止めたよね(笑)
田浦氏:
そう、ヨコオさんがダメっていったので(笑)「これこれ!」って思いながらやっていました。ただ、プレイしていて射撃のゲージがなくなったことがわからなかったり、キャラクターと離れた場所にゲージが出たりしたので、「今は撃てない」ということがもう少しわかりやすくなったら良いなと思いました。また、クールタイムももう少し短くてもいいんじゃないか、と。
開発チームCrimson Dusk:
ご意見いただけて本当に感謝します。プレイヤーがずっと射撃ボタンを押しっぱなしでプレイするということを避けたい事情もあってパリィ要素を入れました。しかしおっしゃるとおり、クールタイムが長いのでその間にパリィが成功したらゲージが回復するようにしています。プレイヤーがそのタイミングでパリィに失敗してしまうと挫折感を生み出してしまうおそれがあるので、そのあたりをもう少しうまく調整していきたいと考えております。

――助言会になっている!ヨコオさんと田浦さんのご助言、個人的にすごく納得です。
ゲームづくりの難しさをどう解決していくか?
――そういった意味では、ヨコオさんと田浦さんは、ゲーム作りの勘所を押さえていると思うのですが、それはプロジェクトをたくさんこなしてきた経験によるものなのか、それともはじめからある程度備わっていたものなのか、どちらでしょうか。
ヨコオ氏:
僕は失敗で学んだのと……好みですね。作っている僕自身にはわかることでも、いざ人にやってもらうと、「この操作がわからない」とか「どこに行ったらいいかわからない」ということが多発して。最初はそれを想像できなかったんだけれども、失敗を繰り返しているうちに学びを得たという感じです。
――その失敗は、現場ですぐに分かる状態なのか、ゲームが世に出てからわかったのか、どちらが多いんでしょうか。
ヨコオ氏:
世に出てから分かったり、経理の方を連れてきていきなり遊ばせてみたり、そういうユーザーテストみたいなものをやってみたりすることでわかってきました。最近はもうあまりやらないですが。

開発チームCrimson Dusk:
勉強になります。私たちも失敗から学習しています。『オートマタ』は、コアゲーマーでも普通のゲーマーでも楽しめるアクションゲームとしてすごくバランスが良いと思っていました。けれど、やはり自分たちの1作目でそこまでのバランスやクオリティに達するのは難しいです。今現在も絶賛調整中なんですが、実際のユーザーにプレイしていただいてテストをすることは非常に大事だと感じております。最近たくさんのユーザーにプレイしてもらっています。
――作ってみてわかる、『オートマタ』のすごさですね。田浦さんは、どのように勘所を鍛えたのでしょうか。
田浦氏:
失敗から学ぶというのももちろんあるんですけれども、僕の場合ラッキーだったのは、周りにベテランがいる環境だったということです。そこで実際に作りながら――手取り足取り……含めたいろんな方法で教えていただきました(笑)
それから既存ゲームの研究もしました。触り心地の良いアクションゲーム、たとえば任天堂さんの作品を触ったときに、ちょっとスティックを倒したらどういう動きをするんだろう、すぐに戻したら、切り返したらどうなるんだろう……と、思いつく限りの操作をしてみて、そこでどんなフィードバックが返ってくるか試したり。勉強の意味を込めて、良い操作感のものはなぜ良いのか、悪い操作感であれば何が悪いかと考えながらプレイし続けていたというのが、作る上での糧になっているなと思います。

――実践だけでなく研究が重要なんですね。
ちなみにここからいろいろと開発チームからの悩みのような相談をかわりにさせていただきます。お二方の作られてきた作品は、仕掛けが多く規模の大きな作品が多い印象です。しかし、作っていく上で最初に作ろうとしたアイデアと、実装にはギャップが出てくると思います。どのようにシュリンクして、折り合いをつけて開発を進めていくのでしょうか。
ヨコオ氏:
僕自身のしていること――したいと思っているし実際しようとしていることは、おっしゃっている話とは実は逆で。最初にすごくコンパクトなものを目指すというのが基本です。予算もそんなにあるわけじゃないし、作れるものにも限界があるので、やれることをすごく絞って……ゲームの仕組みを作るところからスタートします。
たとえば、イベントの仕組みが「ボタン送りのイベント」と「ムービー」と「インゲーム中に自動で流れる音声」という会話モードの3種類で構成されていて、それでシナリオを回しましょうと決めたら、もうそれ以上の何かを作らないようにします。ちゃんとシステムを作った上で、その中で作れるものを作り、「カメラをこうすれば、こういう感じになるんじゃないか」というようなアレンジをしていく。新しいものを毎回入れようとはあまり思っていないですね。実際に作ってみると、つまらないとか狭すぎるとかはあるので、田浦さんたちがどんどん勝手に押し広げたりしていくことが結構あります。
開発チームCrimson Dusk:
勉強になります。ちなみに『ニーア』シリーズおなじみの弾幕の要素はどんな感じで生み出されていきましたか?

『ニーア レプリカント ver.1.22474487139…』
ヨコオ氏:
弾幕は『ニーアレプリカント(以下、レプリカント)』のときにも入っていたんですけど、単純に僕がシューティングゲームが好きで、その要素を入れたいという気持ちで入れました。他のゲームにない要素だったので、それを入れることで商品としてのオリジナリティが出せる。スクリーンショットを撮ったときに、独自性が見えるんじゃないかなというつもりで入れたのが最初です。
開発チームCrimson Dusk:
すごく納得です。私たちも弾幕ゲームが好きでよく「東方Project」作品を遊んでいたので、『オートマタ』のアクションゲームと弾幕の融合のすごさに驚きました。弾幕をアクションゲームにどのような割合で融合するべきかは非常に悩みました。悩むたびに『ニーア』シリーズをプレイし直して、解決策を模索しています。
――『ニーア』シリーズを遊んで、弾幕のあり方と向き合ってる(笑)
ヨコオ氏:
『ニーア』のシリーズの弾幕は、それ単独で死んだり殺したりはできないデザインなんですよね。殺せはするんですけど、ずーっとあれだけでは少し時間がかかるからだるいというデザインになっていて、敵の弾もそこまで痛くないのでそこまで必死に避ける必要もなくて。そういう意味では飾りに近い。飾りと言っても意味はゼロではなくて、基本は近寄って斬るのがベースというところでバランスを組んでいるゲームになっていると思います。
開発チームCrimson Dusk:
私たちも開発途中で弾幕とアクションの融合について話し合い、全体での弾幕の重要度を少し下げつつ、近接戦闘の方がちょっと痛いとか、ダメージが高いとか、弾幕のみになるシーンでのみ重要性を上げるというような形で、バランスを取るという解決策をとっています。

――ヨコオさんが弾幕要素を入れることに関してもはや恒例になっていますが、田浦さんはじめ他の現場スタッフの方々はどう対応されるんでしょうか。
田浦氏:
『オートマタ』を作る時に最初にやることになったのが「弾幕を入れる」でした。あれを入れるだけで『ニーア』シリーズみたいな感覚になるので。ゲームデザインをどうしようとか考えるよりも先に、とりあえず弾出して飛ばすのを試した上で、そこから「あとどうするか」というのを考えていっただけですね。
さっきヨコオさんが言ってましたけど、「スクリーンショットを撮っただけで、このゲームだとわかる」というぱっと見の印象ってすごく大事だと思うので。それに理由をあとからつけたり、どう遊ばせるのかを考えるという順番もアリなんじゃないかなと思っています。
――なるほど。弾幕はユーザーからすると「お決まり」的な要素ですが、開発としては個性や差別化などすごく重要な働きをしているんですね。勉強になります。
続いて開発チームからの悩みです。チーム内ではディレクターとデザイナー、そしてチームメンバーのパワーバランスはどうされているのでしょうか。ヨコオさんが「やる」と言ったことは基本的にみんなが寄り添っていくのか、チーム内で議論があるのか。折り合いの付け方や意見の通し合いなど、調整はどのようにされますか。
ヨコオ氏:
僕自身は、僕が意見を言わずに完成するならそれに越したことはないと思っています。製品が完成すればいいので。僕が言う、言わないはさておき。長い経験の中で、「作れるものしか作れないな」と思うようになりました。たとえば、プログラマーさんに「こういうことをやってくれ」と言っても、その人が作れないものは作れない(笑)それをだいぶ学んだので、作れる人の作れるものでうまく製品を成立させようと。
――リードしていくイメージですが、もう少し俯瞰的なんですね。
ヨコオ氏:
あとは、うまく回っているところは別に何も言わなくても回っているんだから、それよりもうまく回っていないところへフォーカスして「ここはこうしてほしい」と言います。だから田浦さんと『オートマタ』の仕事をしていたときも、僕がめちゃめちゃ押し付けたというより、田浦さんがすごくアクションとかいろいろなシーンを増やしていて、「あ、こうなったんだ」と思うことが多かったです。
開発チームCrimson Dusk:
プログラマーさんが実際に作り出したものが予想と違ったり、予想より良かったりで、その後の作り方や方向性が変わるというケースはありますか?
ヨコオ氏:
そういうケースもざらにあります。たとえば、予想していたのと違うデザインが上がってきたときに、そのデザインに合わせてお話を直したりします。たとえば、『レプリカント』のカイネは自分の中では特に露出を想定したキャラクターではなかったんです。でも、デザインが上がってきたのを見て、それに合わせた設定やお話を考えました。これは、制作のコストには高いものと安いものがあって、自分は一番コストの安いものに変更を加えるという調整をするんです。一番コストが安いのはシナリオなので、シナリオは一番変えやすいんですよね。

『ニーア レプリカント ver.1.22474487139…』公式ホームページより
開発チームCrimson Dusk:
なるほど……。私たちも、プログラマーさんたちに渡して、実際に作って来られたものが全然違った場合に、企画自体や年齢設定やシナリオを変えることが多いです。
田浦さんは、ご自身の考えた良い企画や仕様があったとして、上がってきたものが「まったく方向性の異なるけれど良いもの」だったら、どうされますか。
田浦氏:
上がってきたものの方が良ければ、完全にそちらに乗っかりますね。
――自分のビジョンがあるからこれに合わせてくれという指示はお二人ともにあまりしない、と。
ヨコオ氏:
僕はあまりしているつもりはないですね。ただ、田浦さんと僕では明確に違うと思うことがあって。僕はあらゆることに文句を言うんですけれども、田浦さんは言わないと決めたらもう言わないんです。たとえば、シナリオのこととかは全然文句言わないんです。だけど僕が田浦さんの立場だったら、面白くないことは面白くないって言っちゃうなと思って。そのへんは、職域で分けるタイプの人と、僕みたいに何でもかんでも言うタイプの人がいる。僕は、チュートリアルで「こうした方が良い」というのを見つけたら、シナリオを書いていても思ったときに言って「今言うの?」みたいな衝突が起こるという感じなんです。
開発チームCrimson Dusk:
私たちのチームではディレクターがメインのプログラマーを兼任しています。時折、自分のアイデアと実際の技術力が合わないケースもあります。どのくらいうまく妥協できるかを模索しつつ開発しているところです。
――田浦さんは、なぜ「言わないと決めたら言わない」ようにしているんですか。
田浦氏:
決してそんなことはないんですが……。

――(笑)
田浦氏:
ヨコオさんが、シナリオに対して何も言ってこないと思っているということは、それだけ良いシナリオを書いているということなんだと思います。さすがに、ゲーム的に都合が悪い場合は言ったりもします。
――引き続き開発チームからの悩みを噛み砕いて相談させていただきます。ディレクターあるいは開発の中心人物は全方向から嫌われるけれど、仕事を頼む立場として嫌われ過ぎてはいけないというジレンマを抱えていると思います。納得してもらうためには、対話をするのか、パワープレイでねじ伏せるのかどちらでしょうか。
田浦氏:
ヨコオさん世代のディレクターなんて、「好かれなきゃ」なんて微塵も思ってないですよね。
ヨコオ氏:
(笑)僕らの世代のディレクターはわがままな人が多いんですね。今みたいにゲーム業界がメジャーではなかった時代に入ってくるような変わった連中だったわけで、おかしい人がすごく多いんです。僕も含めてそうなんですけど。好かれるか好かれないかなら、好かれた方が良いに決まっているんですけど、それができない人の方がディレクターには向いているというジレンマがある。たとえば、すごく大雑把な言い方をすれば、「ゲームとスタッフ、どっちが大事だ?」と思ったときに、ゲームを取る人の方がディレクターに向いている。
だから結果的に仲が良くないことがありますね。だからと言って、コミュニケーションができていないことがOKかというと、全然そうではなくて。若い皆さんは、仲良く楽しく作ってもらった方がいいと思います。

開発チームCrimson Dusk:
そうなんですね……。私たちもよく意見のぶつかり合いがあり、喧嘩になってしまいます。けれど、私たちにはあまり上下関係はなく、良いゲームを作り上げるということを共通の目標にしています。
――田浦さんの世代では、そういうことが当たり前ではなく、より関係性が重要なのでは。
田浦氏:
やってきた時代も違うので、同じことをしていても同じように並び立てるわけではないですし、今の時代はチームの人たちに嫌われたら、もうそれこそ訴えられて終わっちゃうくらいのこともありえますし。かといって、そちらに寄り添いすぎるとゲームの完成度はどんどん下がっていってしまうという面もあるので、そのジレンマの中でうまく立ち回る必要があります。会社員として、ヨコオさんたちとはまた違う道を頑張って模索しているみたいなところはあります。
それを頑張ってやっていたら、かつて傍若無人に振る舞っていたヨコオさん世代の人たちが、年のせいかどんどん丸く優しくなってきて、周りからの信頼を得始めていて……。かつて傍若無人な扱いを受けたこちらとしては、それをちょっと面白く思えず……なんかちょっとイライラしながら日々を過ごすという悩ましい日常を送っています(笑)
一同:
(笑)
田浦氏:
ゲームって一人でも作れる時代にはなっているので、究極わがままを貫き通すのだったら一人で作ればいいだけの話ですよね。僕は、ゲームはどこまで行っても人と一緒に作るものだと思っているので、誰かと作る限りはやっぱりみんなで幸せになれる道を――喧嘩しようが仲良くできようが、最終的にはハッピーになれるような形になればいいなと思います。
ヨコオ氏と田浦氏と、インディーゲーム
開発チームCrimson Dusk:
ヨコオさんや田浦さんは小規模開発……いわゆるインディーゲーム開発的なものにもご興味ありますか?
ヨコオ氏:
正直言うと、今のインディーゲーム市場にはこの『炎姫』の皆さんのように、若くて元気な人たちがたくさんいらっしゃって、しかも競争も激しいレッドオーシャンなので、とても怖くてその海に入る気がしないですね。怖すぎる。今そこに行く意味が、僕には全然感じられない。即死してしまう、こんな老人が挑むのは無理……と毎回思っています。
開発チームCrimson Dusk:
インディーゲームはたしかに今激しい荒波の状態で、自分たちもその波に流されないように頑張っているところです。ヨコオさんはまだまだすごいと思っています。そういうところでも作ってみてほしいです。
――田浦さんはどうお考えでしょうか。
田浦氏:
僕も『オートマタ』を作ったときはプラチナゲームズに属していて、今はEel Game Studioという会社で働いています。いくつかのタイトルに携わりながらも、自社の小さなゲームも作っていきたいなと思っているところです。手広くしていこうとまでは思っていないのですが、小さいゲームには作りたいと思った人の情熱がこもりやすいので、そういう情熱のこもった何かを1本、規模は小さくても作っていきたいなと思っています。
――市場がレッドオーシャンであるとかどうかは関係なく?
田浦氏:
そうですね。作り手側が作りたいものができる環境で作れたらいいなと。
――素敵ですね。ヨコオさんは、さきほど「インディーでやるのは怖い」とおっしゃられましたが、たとえば納期や予算をある程度ゆったり取っていいよと言われたとしても怖さが勝ちますか。
ヨコオ氏:
僕はあまり規模に関する希望はなくて、そういう仕事が来たならやると思うんですよね。自分の希望と実際にやる仕事は異なるので、基本的には来たお仕事は断らないんです。インディーゲームのように小予算で小規模に作るぞと言われれば「わかりました」と言って頑張って作ると思います。ただ、ほかの商品とどう違うのかということを意識しないといけないので、どういうふうにそこを補正付けしていくかは考えていく必要があるという気はします。
――ある程度安い価格でありつつボリュームがあるインディーゲームが台頭したりと、競争がどんどん激化していくさまをどのように見られていますか。
田浦氏:
1本1本すべてを把握しているわけではないんですけれども、そんな状態の中でも目に入るゲームは出てくるんですよね。そういった作品はやはり、ぱっと見の印象がほかと違う感じであったり、見た目がちゃんとしっかりしている上で、その見た目がゲームデザインにも反映されていたりするものが多いと感じます。
これだけ多くの作品がリリースされている中でも、そういう点を意識して「これだ!」と思って作っていけば、まだ人の目に届く余地があるのだろうと思っているので、そこまで絶望的な目で見ているわけではないないんです。
開発チームCrimson Dusk:
おっしゃるとおり、ゲームの数が非常に多い中で、どのようにしてユーザーの目に留まることができるのかは課題です。弾幕&パリィ要素のような自分なりの解決策を考えて、「弾幕+アクション+アクションといえば『炎姫』だ」と思ってもらえるような開発を心がけています。
ヨコオ氏:
インディーと言いつつもすごいお金をかけた製品も増えている状況において、少人数で開発をするのはなかなか大変だろうなと想像しているのですが、いろいろな戦い方や目立ち方があると思っています。
さきほど僕が言ったような、「こういう難しいポイント、わかりにくいところをこうしたらいい」という細かい点があるんですけれども、そこを直してちゃんとしたとしても抜本的な解決やブレイクスルーにはならなくて。「どう見せるか」というところが肝になってくるのかなと思います。少人数が情熱だけで作っているということをちゃんと伝えるのもひとつですし、いっそもっと難しくして「この絵柄なのにこんなに難しい!」みたいな方向で外連味を出してあげるとか。
単に快適性を追求することだけが個性ではないので、この製品が何をもって、どのように人の心に残るか……ということを考えていくことが大事かと思います。僕が『炎姫』のメンバーだったらそういうことを考えて、「これをやればみんなびっくりしてくれるかな!?」ということを意識して作るかな、と思いました。
PLAYISM&開発チーム:
ヨコオさんのご助言、本当に参考になります。ありがとうございます。
田浦氏:
そういう意味で言うと、この施策もすごくタイミング的にいいなと。『ニーア』のヨコオタロウだけじゃなくて、「エヴァンゲリオン」のヨコオタロウという名前を活かして対談しました、と出るだけでもキャッチとして効果ありそうだな、と。
ヨコオ氏:
エ、エヴァはちょっと別の話だから……。
一同:
(笑)
開発チームCrimson Dusk:
すいません、ひとつどうしても訊いてみたいことがあります。『オートマタ』のEエンド(ネタバレなので割愛、詳細を知りたい方は検索してほしい)は演出として必要なものだなとプレイヤーとしてすごく実感しています。最初から構想されていたのか、それとも後からこうした方が良いんじゃないかと追加されたもののどちらでしょうか。

ヨコオ氏:
『レプリカント』のときにセーブデータを消したので、『オートマタ』も消した方がいいのかな……みたいな気持ちではいたんですよね。でも、そのくらいの感覚でしかなくて、実際にどうしようかシナリオを書きながら考えているうちに、「ハッキングモード」というシューティングのモードとスタッフロールを組み合わせて、それをオールクリアすることで全部のセーブデータが消えるという仕組みを入れて、シナリオで辻褄を合わせようと考えた気がします。だから、最初からビジョンがあったわけではなくて、材料が出揃った段階でどうするか考えて作った感じですね。
開発チームCrimson Dusk:
とても神がかった演出で感動しました。
ヨコオ氏:
(笑)楽しんでいただけたのなら何よりです。若い人たちが少人数でゲームを作れる時代になったのが、羨ましいなと思います。僕らの時代にはちょっとそういうことは考えられなかったので。
開発チームCrimson Dusk:
ゲーム業界の開発の先輩方がいるからこそ、自分たちがこのように勉強しながらゲームを作ることができています。巨人の肩に乗ったような気持ちで開発しています。
ヨコオ氏:
僕、若い頃そんなこと全然思わなくて、「老人はみんな死ね!」って思っていたから。まともで良い子たちです。
――(笑)
いろいろと『炎姫』へのご助言いただきありがとうございます。最後に改めて、開発チームへお言葉をいただけますか。
田浦氏:
色々言いましたけど、結局自分が良いなと思うことが大事なので、人の意見ばかり聞かずに自分の「こう!」と思うことをやった方が良いです(笑)
ヨコオ氏:
みなさんお若いので、アドバイスは要らないのではないかという気もします。ゲーム作りなんて妥協の塊なので、何か芯があって妥協を一切しないなんてことは僕もやったことはないですし。僕の感想で言うとゲーム作りって、10回くらいバットを振って1回くらいヒットが出ればいいな、という感じ。皆さんにとってはこれが初打席でしょうから、これから10回くらい振っていれば1回くらいヒットが出るので、一振り目くらいは思う存分好きなようにバット振ったらいいんじゃないですか、というのが僕の感想です。
開発チームCrimson Dusk:
お二方とも、ありがとうございます。たしかに私たちはまだ若いチームなので、これからも良い作品を作っていく過程としての一振り目である『炎姫』で、全力の一振りをしようと思います。
――ありがとうございました。
このインタビューは、実は2月25日に実施された。『炎姫』発売まで1週間というところだったが、開発チームがヨコオ氏と田浦氏のアドバイスに奮起して、指摘された箇所は発売前の鬼のアップデートによって製品版に反映されたとのこと。こうしたインタビューを引き受けていただいたお二人およびスクウェア・エニックスに、PLAYISMと『炎姫』開発チームから多大な感謝が贈られたことをここに綴りたい。
『炎姫』は、PC(Steam)向けに3月4日より発売中だ。『炎姫』が強く影響を受けた『ニーア オートマタ』はPC/PS4/Xbox One/Nintendo Switch向けに発売中だ。また同じく『炎姫』が影響を受けている『ニーア レプリカント ver.1.22474487139…』は、PC/PS4/Xbox Oneで発売中。どちらも非常に面白いゲームなので、ぜひプレイしてほしい。
[主催:PLAYISM]
[書き起こし:Kei Aiuchi]
[聞き手・編集・写真:Ayuo Kawase]
[通訳:Shaopo Fu]
[協力:スクウェア・エニックス]
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