「GDC Festival of Gaming 2026」の講演「The State of PC and Console Games in 2026」では,ゲーム市場調査会社Newzooでコンサルティングディレクターを務めるBen Porter氏が,PC・コンソール市場の最新動向を数字ベースで解き明かした。
Ben Porter氏

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 「市場は過去最高益を更新した」といえば景気のいい話に聞こえるが,その実態はインフレ補正を加えると2021年のピークにすら届いていない。F2Pの成長神話が天井を迎え,若年層がAAAタイトルに見向きもしない現実が浮き彫りになるなど,業界の構造変化を示す講演の内容をまとめてみよう。
Newzooのプラットフォーム全体像。タイトル単位のエンゲージメントや収益データを扱う「Game Performance Monitor」を中心に,市場レポートやコンサルティングサービスを展開している

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 Porter氏はまず,ゲーム市場全体の収益推移を俯瞰した。ここでいう「収益」とは,ハードウェアや周辺機器を含まない,プレイヤーによるソフトウェア購入/ゲーム内課金/サブスクリプションへの支出を指している。
ゲーム市場全体の収益推移(2015〜2028年予測)。2025年の約1960億ドルにより,名目上の過去最高を更新したが,インフレ調整後は2021年のピークに届いていない。緑色の棒グラフが実績値,青色が予測値だ

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 2015年から2019年にかけて,Nintendo Switchの登場やライブサービスゲームの台頭,モバイルの急成長によって市場は右肩上がりの成長を続けた。コロナ禍の巣ごもり需要が重なった2021年には,全世界で1840億ドルという過去最高額を記録している。しかし,その後は2024年まで縮小傾向が続き,ようやく2025年に約1960億ドルまで回復。名目上は過去最高を更新したという。
コンソール収益のビジネスモデル別内訳(2025年)。プレミアムが50%(227億ドル)を占め,マイクロトランザクションは27%にとどまる。PCとはほぼ正反対の構造だ

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 ただし,Porter氏はここで重要な注釈を加えた。「これはインフレの影響を受けた名目上の数字です。インフレ調整後の実質ベースで見ると,2021年のピークにはまだ届いていません」。つまり,見出しだけ追えば“過去最高”でも,実質的にはいまだダウンマーケットの渦中にあるというわけだ。
コンソール収益推移。2020年の474億ドルをピークに縮小が続き,2025年もまだ453億ドルで前回最高を下回っている。2026年にようやく上回る見込みだ

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 プラットフォーム別に見ると,2025年はPC市場にとって良好な年となった。成長を牽引したのは3つの地域だ。
 まず中国では,Blizzardの「World of Warcraft」が復帰を果たし,Tencentの「Delta Force」や「Marvel Rivals」がヒット。日本市場では,歴史的にモバイルとコンソールが優先されてきた環境のなかで,Steamへの移行が進んでいる。そして韓国市場でも,Nexonのタイトルなどが好調に推移した。
PC収益のビジネスモデル別内訳(2025年)。マイクロトランザクションが48%(206億ドル)と圧倒的なシェアを占めている

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 PCの収益構造で注目すべきは,全体の約3分の2をマイクロトランザクション(主にF2Pゲーム内課金)が占めている点だ。プレミアムゲーム(買い切り型)の比率は約3分の1にとどまる。
PC市場の収益推移。2020〜2024年のCAGR(年平均成長率)は+3.9%で,コンソールの−2.1%とは対照的な成長を見せた。2025〜2028年の予測CAGRは+6.6%と,3プラットフォーム中で最も高い伸びが見込まれている

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 一方のコンソール市場は回復が遅れており,前回(2020年)の最高益を上回るのは2026年になるとNewzooは予測している。コロナ禍での開発遅延や,コンソールがプレミアムタイトルに大きく依存する構造が,回復の足かせとなっているのだ。
 2025年の成長はSwitch2のローンチによる任天堂エコシステムの活性化が主因であり,今後は「グランド・セフト・オートVI」の発売が最大の起爆剤になるとPorter氏は見込んでいる。
モバイル収益推移。2025年は1084億ドルに達し,中国パブリッシャの好調が牽引した。今回の講演はPC・コンソールが主題だが,モバイルが全体の約半分を占める構図は変わらない

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 コンソールの収益構造は,PCとほぼ正反対の様相を呈している。約50%がプレミアムタイトル(買い切り型)で占められ,マイクロトランザクションは約25%に過ぎない。しかも,その多くは「NBA 2K」や「Call of Duty」といった有料タイトル経由の課金であり,F2P由来ではない。
 PCとコンソールを一括りに「PC/コンソール市場」と語りがちだが,実際にはプレイヤーの嗜好もマネタイズ構造もまったく異なるという指摘は,業界人にとって見逃せないポイントだろう。
プラットフォーム別プレイヤー数の推移(重複あり)。PCは2025年に9億3600万人となり,10億人圏内に迫った。世界のオンライン人口58億人のうち,約36億人がゲームをプレイしているが,今後の爆発的な増加は見込めない

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 続いて,Porter氏はプレイ時間の分析に踏み込んだ。対象は中国とSwitchを除く,PC・コンソールの主要37市場だ。

 F2Pゲームのプレイ時間シェアは,2023年Q4に「LEGO Fortnite」「フォートナイト ORIGIN」のローンチ,「Roblox」のPlayStation展開が重なりピークを迎えたが,以降は減少・停滞し,全体の約42〜43%で推移している。代わりに台頭してきたのが,Pay to Play(買い切り型)ゲームのプレイ時間。そのシェアは大幅に拡大した。

2000年と2025年の年齢別人口ピラミッド。緑色がゲームプレイヤー層を示す。25年間でターゲット年齢層は大きく拡大し,上は65〜69歳にまで広がっている

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 「これまで業界は,F2Pのプレイ時間が今後も拡大し続けるという前提で投資を行ってきました。しかし,いまF2Pは明らかに天井に達しています」とPorter氏は述べる。この変化を受けて,パブリッシャはライブサービスであっても,Pay to Playモデルを採用する方向へシフトし始めているという。「Helldivers 2」や「ARC Raiders」のように買い切り型でありながら,ライブサービスとして運営されるタイトルがその典型例だ。
地域別の収益分布。APACがPC支出の約60%を占める一方,北米と欧州だけでコンソール支出の約80%を握っている。中東・アフリカやラテンアメリカは規模こそ小さいが,前年比の成長率はどのプラットフォームでも最も高い

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 全体のプレイ時間そのものも四半期ベースで横ばいからマイナス成長を記録し始めており,SNSや動画配信サービスとの「時間の奪い合い」が激化していることも見逃せない。
四半期ごとのプレイ時間シェア推移。F2Pのシェアは2023年Q4のピーク以降は縮小し,Pay to Playが過去最高のシェアに達した。赤枠で囲まれた2025年の前年同期比はマイナスに転じている

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Roblox世代はAAAに興味がほぼない――業界が直面する世代間断絶

 プレイ時間の全体的な停滞の裏では,ジャンル間の大きなシフトが起きていた。シューター/バトルロイヤル系が減少する一方,サンドボックス/UGCが急成長。「Minecraft」は前年比+19%,Robloxは+52%の伸びを見せたのである。後者の場合,「Steel Brainrot」や「Girl Garden」といったバイラルコンテンツがそれぞれ同時接続1000万人を記録するなど,“ゲーム”ではなく“プラットフォーム”としての存在感を確立している。
ジャンル別プレイ時間の前年比較。サンドボックスが+36%と突出して成長した一方,バトルロイヤルは−27%,シューターも−5%と大きく減少している

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 Porter氏が提示したデータのなかで,とりわけ印象的だったのがRoblox/Minecraftプレイヤーのプレミアムタイトルへの関心度分析だ。Robloxプレイヤーが「モンスターハンターワイルズ」を遊ぶ確率は平均的なゲーマーの0.41倍,昨年のGame of the Yearに輝いた「Clair Obscur: Expedition 33」でも0.57倍であり,極端に低い。その一方で「Among Us」や「Gang Beasts」といったカジュアル/パーティー系には強い関心を示している。
サンドボックスジャンル内のプレイ時間分布。Robloxが58%を占め,映画公開の追い風を受けたMinecraft(35%)を引き離した。Robloxの前年比成長率は+52%だ

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 「この若年層が大人になったとき,従来のAAAタイトルを遊ぶようになるのか,それともまったく異なる趣向を持ち続けるのか。それは業界全体が注視すべき問いです」――このPorter氏の問いかけは,長期的なタイトル戦略を考えるうえで極めて重い意味を持つ。RobloxとMinecraftのプレイヤー層は重複しており,FortniteやGTA,Call of Dutyも遊ぶものの,その行動圏は大手ライブサービスタイトル間の「回遊」に留まっているのが実態だ。
Roblox/Minecraftプレイヤーのタイトル重複率。両者はFortnite,GTA Onlineなど大手ライブサービスタイトルを中心に回遊しており,密接に重なり合う巨大なエコシステムを形成している

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 価格戦略に関するデータも興味深い。「ソフト価格を80ドルに引き上げるべきか」という議論が業界で続くなか,実際に成長を見せているのは低・中価格帯である。
Roblox/Minecraftプレイヤーのプレミアムタイトルへのオーバーラップ指数。Robloxプレイヤーがモンスターハンターワイルズを遊ぶ率は平均の0.41倍,Expedition 33でも0.57倍にとどまる

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 欧米市場において,30ドル未満の新作PCゲームによる収益は2022年から2025年にかけて156%も成長した。PC全体の支出に占める割合は3%から9%へ拡大し,売上500万ドルを突破するタイトル数も12本から25本に倍増している。この価格帯はPC独占の先行リリースが多い傾向にあるという。
30ドル未満の新作PCタイトルの収益推移と上位5タイトル。2022年から2025年にかけて156%の成長を記録。2025年は「Schedule 1」「R.E.P.O.」「PEAK」などが上位に入った

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 30〜50ドルの価格帯では,PC/PlayStation/Xboxの合算で195%もの成長を記録。ARC Raiders,Clair Obscur: Expedition 33,「Split Fiction」「Elden Ring: Nightreign」など,PCとコンソールで同時にクロスプラットフォーム展開されるタイトルがこのゾーンを牽引している。
 注目すべきは,AAAクラスの開発規模を持つタイトルが含まれているにもかかわらず,あえて価格を抑えてリリースしている点だ。80ドルへの値上げが議論される時代に,中価格帯へと“降りてくる”動きが出始めていることは,開発規模やビジネスモデルを検討するうえで大きな示唆を与えてくれるだろう。
PCでは30ドル未満と30〜50ドルの価格帯が着実にシェアを拡大しているのに対し,PlayStationとXboxは依然として50ドル超が80%前後を占める

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30ドル未満タイトルのプラットフォーム別内訳。PCが圧倒的に大きく,PlayStationやXboxにおける存在感はまだ限定的。PCではSchedule 1が突出したシェア(1.6%)を獲得している

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 講演の後半では,直近のヒット作から抽出したトレンドが紹介された。

 ここで目立つのが「偶発性のあるCo-opゲーム」だ。Helldivers 2や「Lethal Company」のように,ランダムな事象が引き起こすカオスな展開と,近接ボイスチャット(距離に応じて音量が変化する仕様)を組み合わせた体験が,緊張感やコメディ効果を生み出してヒットしている。

 「Disney Dreamlight Valley」や「ハローキティ アイランドアドベンチャー」に代表されるCozy(癒し系)ゲームも定着した。非ゲーム系IPを活用して女性層など未開拓のオーディエンスを取り込む手法は,もはや一過性のトレンドではなくなっている。PvPとCo-opの融合も進んでおり,ARC Raidersでは好戦的なプレイヤーと平和的なプレイヤーをアルゴリズムで振り分ける試みが注目を集めた。

30〜50ドル価格帯のプラットフォーム別収益と上位タイトル。PlayStationの成長率が+99%と最も高い。ARC RaidersはPC/PlayStationの双方でトップに立ち,クロスプラットフォーム展開の有効性を示している

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 そしてシングルプレイゲームも健在だ。ローグライクと他ジャンルの融合やシミュレーション系など,「最高峰のシングルプレイ体験は毎月のようにブレイクアウトを生み出している」とPorter氏は強調する。

 講演の最後に行われた質疑応答では,プレイタイトル数の減少傾向が指摘され,1年間に1〜3本しか遊ばないユーザーが増加していることが確認された。一部の巨大ライブサービスへのプレイ時間の寡占が進んでいるわけだ。

30〜50ドルの新作タイトルの収益推移。PC/PlayStation/Xbox合算では2022年から195%の成長となり,上位5タイトルが全体支出の4.1%を占めるまでに拡大した。2025年はARC Raidersがトップ(1.5%)

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 ルートボックス(ガチャ)に関しては,Steam(Valve)への訴訟が始まっており,判決次第では業界全体が新たなマネタイズ手法への移行を迫られる可能性がある。
 また,30ドル未満のゲームの文脈では,コンポーネント価格の高騰もあいまって「いかに低いPCスペックに合わせて開発するか」が今後の鍵になるという見解が示された。極端なグラフィックス追求はターゲット層を狭めるリスクがあるという指摘は,技術志向の開発者にとって寂しい話かもしれない。

 Porter氏は講演の締めくくりとして,こう語った。「ゲーム業界はあまりにも巨大で多様化しているため,“絶対的な1つのトレンド”は存在しません。さまざまなビジネスモデルが共存しており,ある場所での成功が,別の場所ではまったく逆の結果をもたらすこともあります」

 だからこそ重要なのは,マクロトレンドを盲信するのではなく,自社のターゲット層は誰なのか,どのビジネスモデルが最適なのかを「データに基づいて(Data-informed)」明確に見極めることだ。派手な数字の裏に潜む構造変化を丁寧に読み解いたこの講演は,開発者にもパブリッシャにも,そしてプレイヤーにとっても,業界の現在地を知るうえで有益な内容だった。

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