「Roblox」には,数十万から数百万の同時接続プレイヤーを抱えるゲームが当たり前のように存在する。だがこの巨大プラットフォームでヒットを生み出す方程式は,いまだ謎に包まれている部分が多い。KPIを追いかけてA/Bテストを回せばいいのか? それとも別の何かがあるのか?

 GDC Festival of Gaming 2026の講演「Catching Culture Currents: Riding Resonant Trends in ‘Roblox’ and Beyond」で,Robloxのヒットメーカー2人がその問いに真正面から答えた。登壇したのは,2014年からRobloxで開発を続け「99 Nights in the Forest」などのヒット作を手がけるAlec Kieft氏と,2009年からプレイヤーとしてプラットフォームに触れ,2018年にソロプロジェクトとして「Bee Swarm Simulator」を制作したPiercen Harbut氏(Onett)である。

登壇したPiercen Harbut氏とAlec Kieft氏。Harbut氏は「Onett」の名義で活動し,ソロプロジェクトの「Bee Swarm Simulator」を2018年から運営し続けている。Kieft氏は2014年からRobloxで開発を続け,最新作「99 Nights in the Forest」では100万同時接続を記録した

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 2人が最初に強調したのは,データ分析やKPI偏重のアプローチとは異なる姿勢だ。開発者でありながらプレイヤーでもあり,Robloxのファンでもある――その境界線をあえて曖昧にしたまま,プラットフォーム全体を「1つの芸術作品」として捉えるという,きわめてホリスティック(包括的)なスタンスが彼らの根幹にある。この講演は,その視点から導き出された知見を,具体的なケーススタディとともに共有するものとなった。

 まず2人が定義した「Cultural Currents(文化的な潮流)」という概念を整理しておこう。一般的な「トレンド」や「流行」とは異なり,この言葉はRobloxにおいて2つの意味を同時に持っている。

 第1に,プレイヤーの大群(roaming hordes)の動きだ。タイクーン(Robloxではボタンを踏んで設備を拡張していくループ型ゲームを指し,一般的な経営シミュレーションとは意味が異なる),シミュレータ,ブレイン・ロット(TikTok発のAI生成キャラクター文化に端を発するジャンルで,詳しくは後述する)といった特定のジャンルやメカニクスに慣れ親しんだプレイヤーたちが,ゲームからゲームへと渡り歩きながら,次の「面白いもの」を探し続ける――その集団的な移動のうねりを指す。

 第2に,ゲームの系譜そのものだ。Roblox初期の物理サンドボックス時代から脈々と受け継がれてきたジャンルやメカニクスの歴史――2人はこれを「メタナラティブ(大きな歴史的物語)」と呼んでいた。個々のゲームを孤立した存在としてではなく,プラットフォーム全体の歴史の一部として捉えることで,なぜ特定のジャンルが突然盛り上がるのか,なぜ一見シンプルなゲームが数十万人を集めるのかが見えてくるという。

 こうした独自の文化が育まれた背景として,Kieft氏はRobloxの構造的な特性を挙げた。まず「Accessibility(アクセシビリティ)」――基本プレイ無料でどの端末からもアクセスでき,プレイヤーから開発者への移行が極めて容易である。次に「Streaming(ストリーミング)」で,大容量のアプリをダウンロードする必要がなく,ゲーム間をシームレスに移動できる点を指す。

Robloxが独自の文化を育む3つの構造的特性として「Accessibility」「Streaming」「Simplicity」が挙げられた

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 そしてこの2つの土壌から自然と醸成されたのが,物理サンドボックスを起源とするシンプルさと即時性を重んじる「Simplicity(シンプリシティ)」の文化だという。ゲームに多少のバグがあっても許容される寛容さがあり,コンソールゲームのような作り込みや完成度も求められない。

 そのため独学のアマチュア開発者であっても何百万人ものプレイヤーにリーチでき,素早くイテレーション(反復改善)を回せる環境が整っているのだ。Roblox以外のプラットフォームで開発してきた人にとっては,この「参入障壁の低さ」こそが最大のカルチャーショックかもしれない。

 講演は「Observe(観察)」「Interpret(解釈)」「Ideate(発想)」という3段階のフレームワークに沿って進められた。順を追ってみていこう。

講演の骨格を示すフレームワーク。「Observe(観察)」「Interpret(解釈)」「Ideate(発想)」の3段階で構成される

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 Kieft氏は,10歳のころにRobloxを始めたときの純粋なプレイスタイルを,開発者になった今でも意識的に維持しているという。毎日トップチャートを確認するのはもちろん,自分向けではないゲームの中にも「面白さ」を見出そうとする姿勢を崩さない。なかでも氏が重視するのは,人気作の動向よりも,プレイヤー数は控えめながら強力なコアループや魅力的なテーマを持つ無名のゲームだ。なぜこれだけの人が遊んでいるのか分からない――そういうゲームにこそ,次の潮流の芽が隠れていると氏は語る。
「Fun is Contextual(楽しさは文脈に依存する)」。「Bee Swarm Simulator」と「Murder Mystery 2」を並べ,それぞれが異なる潮流の中で機能していることを示す

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 Harbut氏もこれに同意しつつ,そうした没入的な観察を続けることで,個々のゲームが「ただダウンロードして遊んだだけのもの」から「Robloxの次なる瞬間」へと意味合いを変えていくと述べた。プレイヤーたちも同様で,「これが未来のノスタルジーになるかもしれない」「Robloxという集合的な芸術作品の最前線にいるのかもしれない」という感覚が,ゲームへの時間投資を促しているのだという。
「The Ecology of Trends(トレンドの生態系)」。ゲームの系譜を根や枝が広がる樹木に見立てたビジュアルが印象的だ

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 2つ目のパート「Interpret」では,具体的にどのようにして潮流の中から機会を見出すかが語られた。

 Kieft氏が提示したキー概念が「本能的なコア(Visceral Core)」だ。成功するゲームには,ブロックに追いかけられるスリル,押しつぶされる衝撃,障害物を避ける興奮といった,純粋で本能的な手触りがルーツにあるという。

 たとえばRoblox初期には「Canoe Without a Paddle(パドルのないカヌー)」というゲームがあった。操作すらできないのに,川の流れに身を任せてゴールを目指すスリルにプレイヤーは夢中になったという。やがてゴール地点に報酬が追加され,操作性が加わり,現代の「Build a Boat for Treasure」のようなエンジニアリング要素を含むゲームへと進化していく。だがその根底にある「本能的な楽しさの種」は,最初のカヌーゲームから一貫しているとKieft氏は指摘する。

初期の「Canoe Without a Paddle」から現代の「Build a Boat for Treasure」への進化が矢印で示されている

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 警察と泥棒のジャンルも同様で,Roblox初期から存在する系譜の延長線上に,かつての「Prison Life」の要素を引き継いだ「Jailbreak」の大成功がある。スライドでは,シューター系譜も並列で示されており,「Phantom Forces」や「Arsenal」から「RiVALS」(2025年)に至る流れが可視化されていた。こうした歴史的文脈を把握するために,Wayback Machineのようなツールで過去の人気ゲームを振り返ることも有効だという。
警察と泥棒ジャンルの系譜が年表形式で示されている。上段には2011年「Cops and Robbers RP」から2017年「Jailbreak」への流れ,下段にはシューターの系譜として2015年「Phantom Forces」「Arsenal」から2025年「RiVALS」に至る流れが並ぶ

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 とくに興味深かったのが,「シグナルとノイズ」の判別に関する議論だ。ここでいうシグナルとは,ゲームメカニクスと結びついてプレイヤーの行動様式そのものを変える「真の潮流」を指す。対してノイズとは,話題にはなるがメカニクスには影響を及ぼさない一時的な文化現象のことだ。2人はこの違いを,近年Robloxで流行した2つの現象で例示した。

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 シグナルの好例がBrain Rotだ。もともとはTikTok発のAI生成キャラクターの流行だったが,Roblox内ではタイクーン的なボタン踏みやマルチプライヤーといった特定のコアループを示す「記号」として定着した。プレイヤーはゲーム名に「Brain Rot」と付いているだけで,どんなメカニクスが待っているかを直感的に理解できる。かつて「タイクーン」という言葉がRoblox独自の意味を帯びたのと同じ構造であり,メカニクスと不可分になったからこそ真の潮流たり得たわけだ。

 一方,ノイズの典型例がSkibidi Toiletである。Gary’s Mod発のこのミームは確かにRoblox中を席巻したが,タワーディフェンスなど既存ジャンルの上にスキン(外見)として被せられただけで,ゲームメカニクスとの結びつきを生まなかった。文化的な話題にはなっても,プレイヤーの行動様式を変えるには至らなかったのである。

 また,シグナル/ノイズの判別とは別の角度から,外部コンテンツの扱いについての指摘もあった。
 それは,Robloxの文脈を理解しないまま,重厚なRPGやSFをそのまま移植しようとすると「侵略的外来種」のようになってしまうということだ。外部のアイデアを持ち込むこと自体は悪くないが,まずRoblox内の潮流に乗り,その上に外部の感性を融合させるプロセスが不可欠なのだという。

 プレイヤーの大群を自分のゲームに引き込むことに成功すると,その潮流における「主導権(Authorship)」が開発者に与えられる。ここからが本当の勝負であり,一時的な流行を長続きする潮流へと昇華させるのが開発者の役目だと2人は強調した。

DiscordやYouTube,TikTok,X,Twitch,Threadsといったソーシャルメディアを通じたコミュニティとの対話が示されている

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 ここで重要なのが,データサイエンティストのように指標や大衆の声だけに従うのではなく,Robloxの文化遺産を内面化したうえで,自分自身のアイデンティティや直感をゲームに注ぎ込んで「大きな決断(ビッグスイング)」を行うことだという。

 Harbut氏は「Bee Swarm Simulatorは徹底的に自分自身の表現であり,自分が責任を持つものです」と語り,DiscordやYouTube,TikTokなどから得られるフィードバックも,分析的にではなく「自分自身への影響」として受け止めて消化していると明かした。分析的なアプローチでは,文化の潮流が持つ力のごく一部しか捉えられないというのが,2人の一貫した主張であった。

 講演後半では,具体的なケーススタディが複数紹介された。

 Kieft氏の「Break In」は,ストーリーゲームの元祖である「Camping」が持っていた魅力――プレイヤー同士の近接感や安心感がジャンルの進化とともに忘れ去られようとしていた時期に,その本質を抽出して新たなストーリーゲームとして提示したものだ。ジャンル全体が一方向に進化していくなかで,あえて原点の良さに立ち返ったことが,プレイヤーの大群を捉える結果につながったという。

Kieft氏の「Break In」(2020年)。ストーリーゲームの原点「Camping」が持っていた魅力を抽出し,新たな形で提示した作品だ

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 Harbut氏の「Bee Swarm Simulator」は,「Snow Shoveling Simulator」に代表される収集型シミュレータの潮流に乗りつつ,自身が愛してやまなかったMMOの経済構造やポケモン的なペット収集要素を融合させた作品である。
「Bee Swarm Simulator」のゲーム画面。ハニカム構造の中にさまざまな表情のハチが並ぶ,独特のビジュアルが目を引く

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 初期段階では「Snow Shoveling Simulator」とよく似た外見――小さなポーチとスコップを持たせてスポーンすることで,プレイヤーに「何をすればいいか」を即座に理解させた。そのうえで,数日間で消費される使い捨てゲームではなく,長期的に住み着ける世界へと発展させたという。この試みが,のちの「Pet Simulator」など,シミュレータの系譜を大きく変える流れの起点となった。

 「Adopt Me」の事例も印象的だった。もともとシンプルな家族ロールプレイゲームとしてスタートし,地道なアップデートの積み重ねで1位を獲得。主導権を得たあとに,経済圏を持つペット収集ゲームへと大胆な方向転換(ピボット)を行い,長年にわたってプラットフォームのアルゴリズム変更を乗り越えてきたという。

「Adopt Me!」(2017年)を例に,長期的な定着に必要な4つの要素が示されている

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 講演では長期定着に必要な要素として「Satisfying loops(満足感のあるループ)」「Present long-term goals(長期目標の提示)」「Community building(コミュニティ構築)」「Extrapolate satisfaction into key pillars(満足感を柱へと展開する)」の4点が挙げられた。講演の数日前にも再び1位に返り咲いたとのことで,「潮流の主導権をいかした長期的成功」の最たる例として紹介された。

 2人はさらに,2025年に記録的なヒットとなった「Grow a Garden」にも言及した。Harbut氏によれば,このゲームは真空状態から生まれたものではない。Roblox初期からのレトロ美学への回帰,シミュレータやタイクーンの系譜,RNG(ランダム生成)ムーブメント,そして「Bee Swarm Simulator」で意識的に取り入れたという「開発者とプレイヤーの距離の近さ」――こうした複数の潮流が合流した結果として,あの爆発的ヒットが生まれたのだと分析していた。

「Grow a Garden」(2025年)が,複数の潮流の合流点に位置する作品として紹介された

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 Kieft氏の最新作「99 Nights in the Forest」は,直接的な先行事例のない作品だが,100万同時接続を記録した協力型列車進行ゲーム「Dead Rails」の潮流を参考にしているそうだ。
 一方通行の進行を全方位の探索へと拡張しつつも,Dead Railsのインベントリシステムである「袋(Sack)」をあえて採用することで,プレイヤーに「どのようなゲームか」を直感的に伝達した。初期のアナリティクスは芳しくなかったにもかかわらず,実際にプレイした開発者仲間たちは「これはヒットする」と確信していたという。データではなく,文化への同調が正しい判断を導いたのかもしれない。

 講演の結びで2人が述べたメッセージは明快だった。Robloxで成功するためには,まずプラットフォームの文化に対する謙虚さを持ち,フロントページの動きを執拗に観察して文化と同調すること。メタナラティブを追い,異なる要素が交わる機会を見極め,本能的な楽しさの種(コア)を見失わないこと。そして外部のゲームをただ持ち込むのではなく,プラットフォーム固有の文脈を通じて主導権を得たうえで,自身が大切にしているアイデアをプレイヤーに提示していくこと。

「包括的かつ芸術的なレンズを持つこと」「Robloxの潮流のメタナラティブが機会を照らすこと」「主導権が潮流から世界を生み出すこと」の3点が示された

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 孤立して見える「Bee Swarm Simulator」のような大ヒット作であっても,実際にはRobloxの歴史的な文脈と複数の潮流の融合によって生まれている――Harbut氏のこの一言が,講演全体を端的に物語っていたように思う。

 正直に白状すると,筆者はRobloxの文化圏にほとんど馴染みがない状態でこの講演に臨んだ。タイクーンもBrain Rotも,言葉としては知っていても,その裏側にある系譜や文脈までは想像が及んでいなかった。だからこそ,2人が語る「潮流」の奥深さは,ある意味カルチャーショックですらあった。

 だが同時に,彼らが説いていたことの本質は,Robloxに限った話ではないとも感じている。プラットフォームの文化に謙虚に向き合い,歴史の流れを読み,そこに自分自身のビジョンを重ねていく。それはSteamであれモバイルであれ,ゲームを作って届けようとするすべての人に通じる姿勢ともいえるだろう。自分が知らない世界にこそ,まだ見ぬヒントが転がっている――そう思わせてくれる講演だった。

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